連載
※ 前方の山々は自宅付近から見る那須連山

第5回 EM柴田農園直伝 トマトの土づくりから定植まで
〜50からのトマトづくり

50からのトマトづくりも今年13回目の栽培が始まりました。
家庭菜園で一番人気はやはりトマトですね。この連載ではトマト栽培の土づくりから最後の片づけまで、詳しく説明していく予定です。

トマトの故郷は赤道直下の南米アンデス山脈。高地で雨が少ないところなので、日本の梅雨時のような高温、多湿はとても苦手です。特に、トマトの葉はそのような気候にとても弱く、病気になりやすいのです。弱ったトマトには虫が付きやすく、枯れてしまうことが多いです。そうならないように、トマトの専業農家さんは軒高で、大型のハウスで、農薬を使って病害虫から守り、化学肥料を使ってたわわに実らせているのです。

でもね、家庭菜園でもちょっとした工夫に加えEMを使うことにより、化学肥料や農薬を使わなくとも長期間収穫を楽しむことができるのですよ。私の農園では、霜の心配がなくなる5月のゴールデンウイーク以降に定植し、収穫は7月上旬から霜が降る11月下旬までの約5ヶ月間にわたります。
今回はトマトの土づくりから定植までを説明します。


EM栽培だからこそ!土づくりに塩の活用

3月下旬になったらトマトを植え付ける前の準備に入ります。まずは雑草対策として塩を撒きます。

トラック草

写真のハウスの広さ、100uに対して、50kg(1u当たり500g)の塩を撒き、前回の土づくりと同様、除草シートを全面に敷きます。
この状態でEM活性液の10倍希釈液を繰り返し散布して、土が乾かないように管理します。1週間くらいで雑草は枯れてしまいます。
始めに使う塩は雑草対策で、その後EM活性液を散布することにより塩は肥料に変わります。EM栽培だからこそ可能な、大変便利な資材です。
このことは、2011年3月11日の東日本大震災で津波の被害にあった宮城県で証明されました。通常、津波で海水に覆われた田んぼでは塩害で数年は栽培できませんが、EMのお米農家さんはEMをたっぷりと散布してこの年の5月に田植えをしました。有機栽培にもかかわらず10アール当たり13俵の収穫があったそうです。まさしく塩が肥料に変わったのです。
※参照:Webエコピュア連載「新・夢に生きる」第76回「絆の井戸」第108回「海水活性液と塩の多目的活用」第137回「塩の浄化力」

植物にとって塩は危険なものです。塩の効果は、前回(第4回)の雑草を使った土づくりのように有機物がしっかり入っていて、微生物(EM)がきちんと住み着いている圃場でのみ発揮されます。EMボカシや生ごみ堆肥も合わせて施すと効果はさらに上がります。
話を戻しますが、植え付け前のトマトの土づくりでは肥料は入れず、塩だけです。


トマトの定植

トマト農家での研修
今年は5月14日にトマト定植。品種はサカタの大玉トマト「麗月」。
トマトを定植するのに重要なポイントが2つあります。
【その1】トマトの苗を植えるタイミングは第1花房が開花した時です。
【その2】花房は通路側に向けて植えます。なぜなら、1番目の花房のあとに葉が3枚、続いて90度ずつずれて花が出てきますから、2番目以降の花房がいつも通路側にあるので収穫や管理がとても便利になります。
トマト栽培は葉、葉、葉、花、と4拍子のリズムに乗ってやりましょう!
家庭菜園などで欲張ってたくさん植えると、風通しが悪くなり、病気や虫の住処になってしまうことがあります。私の農園では、ハウス内のトマトの株間は55pと比較的広めです。トマトたちも病害虫対策のため「密」を避けましょう!
このパイプハウスは間口5.4mを4.8mに加工してあります。台風などの強風対策だけでなく、ハウスの両側と真ん中に通路が1mずつと、その間に90pの畝が2本つくれたのでトマト栽培には最適なサイズなのです。

5月に定植するには、逆算すると種まきは3月です。寒い時期から育苗することになるので、家庭菜園の規模でしたら苗を購入することをお勧めします。また、定植する時にはコンパニオンプランツとしてニラを一緒に植えます。
コンパニオンプランツとは、一緒に植えると互いに良い影響を与え合う、相性の良い植物のことです。(人間社会でもありそうですね!)
ニラの確保は、昨年トマトと一緒に植えて越冬したニラを使うので、特に栽培はしていません。

トマトと相性の良いニラ。トマトの定植に合わせて両側に混植する
トマトと相性の良いニラ。トマトの定植に合わせて両側に混植する


長期間栽培するために必要な誘引作業

斜めに誘引するのも長期栽培のポイントの1つ
斜めに誘引するのも長期栽培のポイントの1つ

重要なのは長期間栽培するために必要なトマトを誘引するための仕立てです。
植えた当初はひざ下あたりだったトマトの苗も、夏ごろには早くも人間の背丈を超え、手に負えなくなりジャングルになってしまう光景をよく見かけます。このハウスでは斜めに誘引して長さを確保します。それでも、トマトの背丈は天井近くまで達しますが、天井に達したころには第1花房、第2花房と順次収穫が始まります。

第1花房、第2花房の収穫が終わったら、その下の葉は必要がなくなるので順次取り除いていきます。こうするとすき間ができるので、伸びている茎全体を下に降ろします。さらに、第3花房、第4花房…と収穫が終わったら葉を取り除き、下に降ろすことを繰り返すと11月頃には長さ5mくらいになりますがハウス内は常に整然としています。
この巻き降ろしの作業は一見面倒のようですが、始めに誘引用のひもの設置個所を決めてバーに巻き付け、あとは必要な時にハンドルを回すだけで一斉に巻き降ろすことができる優れものです。

ハウス天井近くのバーに予め誘引用のひもを巻き付けておく。巻き降ろしの作業を効率よくするためです
巻き降ろしの作業を効率よくするため、ハウス天井近くのバーに予め誘引用のひもを巻き付けておく

ひもは丈夫で紫外線で劣化しないものを使う
ひもは丈夫で紫外線で劣化しないものを使う

トラック草
トマトを下に降ろす際は、ハンドル(写真手前のレバー)を回す

定植前にハウス内にはたっぷりと水を入れ、その後第3花房が開花するまで水は一度も与えません。今まで毎日水をもらっていたトマトたち。さあ大変!この苦境をどう乗り越えるのか。次回は定植後の水管理と追肥などを説明したいと思います。またEMボカシづくりについてのお話しも合わせて致します。

6月20日に栃木県矢板市で、「EMを使って、これからの新しい生活様式を考えるお話し会」を開催します。
詳細と申し込みは下記をご覧ください。

(2021年5月29日)

【柴田さんへの質問はこちらから】→<Web Ecopure お問い合わせフォームへ>

<PROFILE>
50歳まで神奈川県で共働きをし、残業続きの忙しい日々を送っていた。定年退職まで共働きをしていればお金は貯まるし、何でも買える。 しかし健康は買えない。健康でいられたらお金は要らない。そういう思いから和明さんの父親の故郷、栃木県那須塩原市に移住して夫婦で農業を始める。健康維持のためEM生活実践中!

柴田和明(しばたかずあき)
会社退職後、約2年間栃木県農業大学校で農業を学び、その後トマト農家で1年間研修を受け就農。

柴田知子(しばたともこ)
会社退職後、東京農業大学(世田谷区)オープンキャンパスのカレッジ講座で野菜や果樹の育て方、スローフード、発酵などの講座を受講。EM柴田農園では、種まきから仮植、種取りなどの細やかな作業を担当。

Facebook:http://www.facebook.com/kazuaki.shibata.98


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