連載



EnglishEM研究機構英語サイト

コロンビアへのEMの導入

中米コロンビアというと「麻薬シンジゲート」を連想させられるイメージがあり、汚職がまん延している国という大きな誤解があります。確かに現在の大統領が当選するまでは危ない国であったことは否定できませんが、大統領の強烈なリーダーシップによって、平和で美しい国へと大きく変わり始めています。

コロンビアへEMが導入されたのは今から8年前で、コスタリカのアース大学の卒業生会によるもので、生ごみのリサイクルや畜産公害対策からスタートしました。様々な有機廃棄物のEMによる資源化は顕著な成果を上げ、またたく間に世界1の有機の花の産地となってしまいました。

アース大学の卒業生会の活動は、農業はもとより環境や健康分野にも急速に拡大し続けていますが、EM活動の中核となっているのがMD財団です。MD財団はカトリック系の神父さんが、1日1分でもいいから人のために役立つことを考え実行しようという呼びかけからスタートし、貧困者の自立のために自治政府並みの活動を行っています。

博愛主義が徹底しているため、財界からも多額の寄付を受け入れており、会員には政府の要人も多く、社会福祉も政府と二人三脚で大きな成果を上げています。教育にも力を注いでおり、小中高校はもとより大学やテレビ、ラジオの放送局も持っています。また全国各地に支部があり、多数のボランティアによって支えられています。

私は30代の前半に数回にわたってコロンビアの各地で資源植物の探索に当たった経験があり、プラントハンターにとっては尽きることのない魅力ある国であり、1次産業の潜在力は世界有数と言えるくらいに優れたものを持っています。当時、中米各地をまわってコロンビア(ボゴタ)入りして驚いたのは、緑が鮮やかで植物の種類が多く、牛も丸々と太っていたことであり、ユートピアの条件を具備しているという印象が今でも脳裏に残っています。

当時からコーヒーは有名で、花はオランダに次いで世界第2位で今でも変わりませんが、治安は悪くボゴタでは泥棒と知恵比べをする毎日でした。朝に万全を期しても、夕方までにはペンや小物や小銭は必ず盗られており、その腕前にほとほと感心したものです。不思議なことに、そのようなことがこわいとか憎らしいとか、嫌だという気分ではなく、何となく楽しんでいました。帰国後も中米でどこの国がいいかと聞かれると、一般的に言えばコスタリカ、でもコロンビアは捨てがたく、社会の仕組みがうまくできればユートピアになると答えていました。

昨年の秋はコロンビアにEMが導入されてから3回目の訪問となりましたが、前回に比べると治安も回復し、街々はかなりキレイになり、いつの間にかEMのモデル国家としての体制が着々と進められていました。

国策となったEM技術

MD財団がEMの普及母体となったため、第1回の訪問から農林、環境の各大臣と財界人を交えた懇親会があり、第2回目は大統領府で大統領の名代として大統領夫人に1時間あまりの時間を取ってもらい、国策としてのEMの活用について話し合いをすることができました。

今回は可能な限り偉い人に会わず、現場を徹底して見たいとの希望を出し、MD財団の協力でエビ養殖場や都市ごみコンポスト、学校教育でのEM活動、有機の花などを案内してもらいました。

世界NO1のEMエビ養殖場

コロンビアの東部、カリブ海側に位置し、世界遺産ともなっているカルタヘナ地区にある850haのエビ養殖場は名実ともに世界NO.1の養殖場です。ホワイトスポットウイルスなどの病気や水汚染対策で5年前からEMを本格的に活用しています。haあたりのエビの収量は5~6トン、稚エビの死亡率は1~2%、ヘドロも全くなく養殖後の排水が放流される周辺の海域は大々的に浄化されています。EMの投入量は2次活性液で週に600トン、30トンの活性液タンクが20個も連結されており、EM関連サイトはEM村と称されていました。

世界NO1のサトウキビアルコール廃液リサイクルシステム

コロンビアの南部に位置するカリ市も、かつて麻薬組織で勇名をはせましたが、サトウキビからアルコールをとった廃液にEMを添加し、サトウキビ畑に戻しています。その結果は肥料が40~60%節減され、収量も30~40%も増加、病害虫が激減し、株出しが15年以上もできるようになりました。バイオ燃料としてのアルコールは世界的なブームですが、その廃液は悪臭を発し、水系の汚染源で大問題となっていますが、コロンビアでは世界に誇れるモデルが一般化しています。

世界NO1の都市ごみリサイクルシステム

MD財団が指導しているボゴタ市を中心に、都市部から出されるごみの分別と資源化システムはこの国の将来を予見させます。学校教育の中にEMを活用したごみ資源化とそれをお金に換えるためのマネジメントシステムが普及し始めており、それに合格した小学高学年から中学生にEMインストラクターの資格を与えています。MD財団のボランティアと学校側の連携によるものですが、教師によると子どもたちが自立と社会意識を持つようになり、教育効果は抜群とのことです。

世界NO1のEM指導者養成システム

MD財団の大学には環境と農業分野の学科があり、すべてEMによる問題解決法の教育が行われています。所属のEM技術の関連研究所もスタッフは教授陣の協力もあり、かなりのハイレベルに達しています。また普及部も全国にネットワークを持っており、国全体をEM化する体制が着々と進んでいます。今回はMD大学で学生と社会人を対象に2回の講演を行いましたが、その熱気には圧倒される思いでした。

その他、世界NO1の有機の花や医療、土木建築などなど、世界的なモデルが着々と出来上がっています。最終日には共同記者会見を行い、環境大臣にEMによる国造りについて説明を行いました。大臣はEMによる国造りは大統領の方針でもあり、積極的に進めていく考えであることを強調していました。今年は6月の中下旬にかけて大統領も参加し、コロンビアで中米EMフォーラムが行われることが決定しています。

(2008年2月1日・毎月1日更新)
PROFILE
ひが・てるお/1941年沖縄県生まれ。EMの開発者。琉球大学名誉教授。国際EM技術センター長。アジア・太平洋自然農業ネットワーク会長、(公財)自然農法国際研究開発センター評議員、(公財)日本花の会評議員、NPO法人地球環境・共生ネットワーク理事長、農水省・国土交通省提唱「全国花のまちづくりコンクール」審査委員長(平成3年〜平成28年)。著書に「新・地球を救う大変革」「地球を救う大変革①②③」「甦る未来」(サンマーク出版)、「EM医学革命」「新世紀EM環境革命」(綜合ユニコム)、「微生物の農業利用と環境保全」(農文協)、「愛と微生物のすべて」(ヒカルランド)、「シントロピーの法則」(地球環境共生ネットワーク)など。2019年8月に最新刊「日本の真髄」(文芸アカデミー)を上梓。2022年(令和4年)春の勲章・褒章において、瑞宝中綬章を受章した。

【世界1のサトウキビアルコール廃液リサイクルシステム】

EM添加アルコール廃液ヲサトウキビ畑に注入


アルコール廃液で10a当り15~20トンに生長したサトウキビ


【世界1のEMエビ養殖場】

850haのEMエビ養殖場


EMの1次活性液工場


EMの2次活性液工場


1基30トンの活性液タンク


【都市ごみリサイクル】

搬入された都市の有機ごみにEMを散布


堆肥ヤード


世界1の有機の花の出荷調整状況

トップページ | EMとは? | 特集・レポート | 連載 | 投稿ひろば | 用語集 | FAQ | バックナンバー | EM情報室 | リンク集 | サイトマップ

Copyright (C) Eco Pure All Rights Reserved.