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旧来の農業の罠からの脱出

これまでの農業は、その生産力を高めるため、必然的に人工物を活用するようになり、化学肥料、農薬、大型機械という現代の姿に達しています。

このスタイルは、土壌の劣化を加速し、生態系を破壊し、生物多様性を壊滅してしまうばかりでなく、表土の流亡、水系や大気の汚染とも直結し、人間の健康にも潜在的な危機となっています。食料生産的な見地からすれば、歴史的に、それなりの成果を上げていますが、構造的には、自己矛盾を拡大し、自滅の道を歩んでいます。

すなわち、自然の力とは真逆の状態にあり、自然力を全く活用できない致命的な欠陥を持っています。これまで、自然力の本質は、蘇生的なマイクロバイオーム(微生物相)に支えられており、そのレベルを高め、蓄積していくと、超限界突破のレベルになることを機会あるごとに説明してきました。

しかしながら、現実には、その意味が全く理解されず、旧来の農業の罠にはまってしまい、多くの無駄や徒労を重ねています。安全で快適、低コストで高品質で多収で、持続可能な農業を通して、自然生態系を豊かにし、生物多様性を守り、人々を健康にし、経済的にも豊かになることが「農の本質」であることを忘れてはなりません。

旧来の農法は、収穫が終わると、その後の田畑の管理は放棄し、雑草だらけとなったり、病害虫の巣になったり、微生物相も貧弱となってしまいます。そのため、次の植付けの前に深耕をしたり、様々な土壌改良に多大なコストをかけ、収穫と同時にゼロに戻る仕組になっており、コストをかけない限り、年々生産力は低下し、農地は必ず荒廃する必然性を持っています。

この罠からの脱出には、農業の生産力は土壌のマイクロバイオーム(微生物相)の蘇生的な力を高め、その力を年々歳々重ねるという方法に徹する必要があります。これまで、EMの密度を高め、空間や土壌のエネルギーを整流する結界の作り方等々について詳しく述べ、それなりの目を見張る成果も上がっています。

しかしながら、このような事例をチェックすると、ほとんどが旧来の農業の罠にはまっています。すなわち、収穫後は放置し、田畑の自然力を著しく低下させ、その後に耕起し、土壌改良を行いEMを散布しているのです。

海水培養のEM活性液や塩の多目的な活用によって、完全に不耕起、無除草、無農薬栽培が可能となり、空間や土中の整流が行われていると、EMを中心とする土壌の原子転換力も著しく増強されます。

要は、田畑を休まさず、EMを投入し続け、土中の自然力を高める必要があるということになります。すなわち、耕起するなら、この労力分の塩や海水EM活性液を散布するということはもとより、あらゆる機会に塩や炭を活用することに尽きます。

EMは量子的な性質を持っていますので、回数多く続けると、その回数分だけ累積的効果を発揮します。

写真1と2は、5年以上も不耕起の我が家の現在(8月上旬)の花壇ですが、シーズンが終わった花のあとに、次の花苗を植えるだけで、夏の暑さもすべてパワーにしています。塩はu当り、昨年の12月に100g、梅雨の後半(6月末)に50gくらい施用したのみです。

これまで、盛夏にこのレベルを維持することは不可能なことでしたが、雑草もほとんどなく、花の終わった残渣を表面に敷いているだけです。真夏の花の管理はもとより、夏野菜等も自給菜園的であれば、楽々と望ましい成果を上げることができます。


 写真1

 写真2

写真3は、オクラのまわりの樹々に、剪定した枝葉を敷きつめた現在の状態です。塩の施用はu当り100g、活着(定植2週間後)後に施用したのみですが、その後の塩の追加は不要と考えています。すなわち、EM等による原子転換は、塩に限らず、他の元素も転換してくれるからです。

写真4は、秋野菜を植える場所に落葉や剪定の枝葉を敷きつめ、塩を撒いて、時々、EMの活性液を施用し、土壌のマイクロバイオームがハイレベルになるように管理をしています。

このような方法を続ければ、どんな荒地でも、たちまちにして豊かな生産力地に変えられるのです。EMを肥料や農薬の代わりに使うのでなく、年がら年中使い続け、肥料分が不足したと思えば、年がら年中塩を施用するという考えに徹し、旧来の農業の罠から脱出し、未来型の理想的な農業に進化すべきです。


 写真3

 写真4

(2017年8月17日)



PROFILE
ひが・てるお/1941年沖縄県生まれ。EMの開発者。琉球大学名誉教授。国際EM技術センター長。アジア・太平洋自然農業ネットワーク会長、(公財)自然農法国際研究開発センター評議員、(公財)日本花の会評議員、NPO法人地球環境・共生ネットワーク理事長、農水省・国土交通省提唱「全国花のまちづくりコンクール」審査委員長(平成3年〜平成28年)。著書に「新・地球を救う大変革」「地球を救う大変革①②③」「甦る未来」(サンマーク出版)、「EM医学革命」「新世紀EM環境革命」(綜合ユニコム)、「微生物の農業利用と環境保全」(農文協)、「愛と微生物のすべて」(ヒカルランド)、「シントロピーの法則」(地球環境共生ネットワーク)など。2019年8月に最新刊「日本の真髄」(文芸アカデミー)を上梓。2022年(令和4年)春の勲章・褒章において、瑞宝中綬章を受章した。

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