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異常気象

4月下旬になっても気温が上がらず、全国的に野菜の価格がはね上がっています。つい昨年まで地球温暖化と騒いでいた空気も急に静かになってしまいました。私は、今から35年以上も前に、過去30年間の気象データを精査したことがあります。私の最初の著書となった「沖縄の園芸」で沖縄の気候特性を明確にし、栽培にあたっての対策をつくるためでした。その頃は、まだEMは完成しておらず、化学肥料農業中心の栽培書です。

沖縄の年平均気温や年間降雨量を見る限り、農業にとっては、雨がやや多すぎるものの、植物の生育にとっては望ましいレベルにあり、一見すると最適と思える数値です。しかし、実際に自分が経験した過去の30年は大干ばつであったり、長雨であったり、ひどい集中豪雨があったりして、統計のデータのような姿はまったく思い当たりませんでした。

その上、強烈な台風が年に4〜5回も来襲したかと思えば、数年間まったくない年もあり、現実は統計とは異なっていました。その結果、明らかになったことは、統計とほぼ一致する気象条件は皆無で、その観点から見れば、統計上の平均値が異常気象といえる程に、特殊なものであるという結論になりました。

沖縄の土壌はサンゴ石灰岩がベースとなった、重粘質のアルカリ土壌地帯と三紀層の強酸性の重粘質の赤土が大半を占めていますが、島尻マージと称されるサンゴ石灰岩の溶脱層は土質も浅く保水性が悪く、干ばつの常襲地帯でもあります。その上、熱帯や温帯の病害虫もすべて発生します。

平均気温を見る限り、冬は暖かいということになっていますが、熱帯植物にとっては寒すぎる上に、1〜2ヶ月は極端に低温になったり、日照量もまったく当てにならないくらい、大きな変動があります。このような条件で、まともにできて、ある一定以上の収入が得られる作物は、サトウキビとパイナップルのみで、その他の作物、特に園芸作物は、気象のすべて、病害虫のすべて、土壌のすべてに対応できる技術がなければ不可能です。

このような沖縄においても、数年間、台風がほとんどなく、雨も適当に降るという周期が10〜15年に1回あります。その時期の沖縄は、まさに植物の楽園で、果物はたわわに実り、緑は深く鮮やかで、この島の無限なる可能性を見せてくれます。たまたま、この周期にめぐり会った素人は、この現実から、沖縄農業に見果てぬ夢をみるようになり、農業に挑戦するようになります。

天は無慈悲なもので、うまく行き始めた頃を見計らって、台風や干ばつや多雨や低温や高温など、様々な異常気象をプレゼントしてきます。挑戦者も1年や2年くらいは持ちこたえられますが、3年目になると資金も途絶えて、または多額の借金を抱えて見果てぬ夢は露となって消えてしまいます。天は意地悪なもので、みんながあきらめた頃に、理想的な気象をプレゼントします。そのときには、次の新人が見果てぬ夢をみるようになり、新しい挑戦者となり、3〜4年後に消えるという沖縄農業の魔性にはまってしまい、犠牲累々の歴史を繰り返しています。

私は、知識や技術を集約すれば、すなわち農業を知識や技術集約産業にすれば、この問題を解決できると考え、沖縄の冬は風も強く、熱帯作物にとって冬季は寒いのでハウスが必要であることを強調しました。また、夏の台風対策はH鋼を使った本格的なものにすべきという提案を行い、「沖縄は常夏」という当時の識者の常識をひっくり返し、農水省もこの提案を認めてくれました。ハウスの活用は、風が強く雨の多い沖縄にとっては、一石二鳥どころではない効果があり、園芸作物の安定栽培の要ともなっています。

当初から、このようなハンディキャップの多い沖縄での農業振興技術は、世界のどこへ行っても通用するという自負を持っており、東南アジア、中東の農業指導にも挑戦できるようになりましたが、技術はだんだん自然と離れた方向へ進み、とうとう私自身が慢性的な農薬中毒病になってしまったのです。

幸いなことがいろいろ重なって、EMの発見にたどり着いたのは1980年、実用化は82年から始まりました。EM技術で自然の力を上手に使えるようになった今日では、沖縄農業に革新的な技術集約が可能となってきました。

EM技術による災害対策

1.低温対策(冷害)
土中のEMの密度が高まると地温がもっとも低下する早朝に2〜4℃も地温が高くなることは、あまり知られていない事実です。EMをコンスタントに使い続けている田畑は、寒冷地では、雪が1ヶ月以上も早く溶け、霜が降るのも1ヶ月も遅いという事例が、東北、北海道で多数確認されています。北海道は昨年、日照不足の上に冷夏となり、60年ぶりの夏の冷害とも言われましたが、EMを徹底して使った新篠津村の大半の農家は、平年並み、または平年よりも良かったという結果が出ています。EMモデルタウン推進事業を行っている三笠市でも、新篠津村と類似の結果を得ています。

EMボカシを2〜3割くらい多めに施用し、同時にEM活性液を10アールあたり300〜500リットル施用し、EM7の葉面散布などを併用すれば、防霜効果は強化され、同時に光合成が高まり、抗酸化力の強化によって、低温障害を完全に防ぐことも可能となります。葉面散布は意外に効果が高く、週に1〜2回(EM活性液500倍、EM7を5000倍〜10000倍、EMスーパーセラC(EMセラミックスパウダー)5000倍、EM液体石けん1000倍)で際立った効果が得られます。

2.夏の高温対策
土中のEMの密度が高まると、地温が最高となる午後から夕方にかけ地温は2〜3℃も低くなりますので、高温対策をほぼ確実に達成することが可能です。既述のような葉面散布を行うと、光合成が促進される上に、抗酸化力が強化されます。その結果、収量や品質の向上と病害虫対策が同時に行えるようになりますので、油断の内容に対応する心構えを忘れてはなりません。

3.集中豪雨や台風対策
排水や防風林など万全を期しても、どうにもならない被害が発生します。特に果樹の大半は露地のままですので、土中のEMの密度を常に高めると共に、EM活性液の施用を徹底します。年に2〜3回地際の幹にEMスーパーセラCの塗布はもとより、台風や大雨の1〜2日前の葉面散布と直後の葉面散布(被害が発生して24時間〜12時間の間)は、劇的な効果があります。被害が甚大と思われる場合は、EM・Xゴールドを5000倍になるように添加すると、なお効果的です。

水浸しになったトマト、キュウリ、ナス、メロンなどの果菜類も、葉面散布はもとより、根圏にも十分に注入すれば、奇跡的な回復も期待できます。

4.稲作の倒伏防止
EM栽培を徹底するだけで、かなりの効果がありますが、出穂期から登熟期にかけて、EMスーパーセラCを2000倍くらいに高めにした既述の葉面散布液を2回散布します。収量も5〜10%増、品質も1〜2ランクも向上しますので、稲作には不可欠のものです。

5.ハウスや農業施設の強化対策
これまで述べた葉面散布を、ハウスの鉄骨やビニール、その他の施設にも行います。特に基礎部分にEMスーパーセラCをペンキと混ぜて塗布したり、EM活性液で施設全体を年に数回洗うように洗浄すれば、かなり強い台風でもハウスはビクともせず、中の作物の成長は、極めて良好な状態に変わります。EMの持つ3D波動によるエネルギーの付加現象です。

以上、簡単に異常気象が発生した場合の災害対策について述べましたが、対応の仕方はすべてワンパターンです。なぜならば、災害のダメージの生理的要因は、高温であれ低温であれ、水害や台風、塩害などすべてが結果的に強烈な活性酸素を誘発するため起こるからです。EMの抗酸化力は、その活性酸素を消却する力があることから、劇的な効果が現れるのです。効果が出なかった場合は、EMが足りなかっただけと言えます。

(2010年5月1日)
PROFILE
ひが・てるお/1941年沖縄県生まれ。EMの開発者。琉球大学名誉教授。国際EM技術センター長。アジア・太平洋自然農業ネットワーク会長、(公財)自然農法国際研究開発センター評議員、(公財)日本花の会評議員、NPO法人地球環境・共生ネットワーク理事長、農水省・国土交通省提唱「全国花のまちづくりコンクール」審査委員長(平成3年〜平成28年)。著書に「新・地球を救う大変革」「地球を救う大変革①②③」「甦る未来」(サンマーク出版)、「EM医学革命」「新世紀EM環境革命」(綜合ユニコム)、「微生物の農業利用と環境保全」(農文協)、「愛と微生物のすべて」(ヒカルランド)、「シントロピーの法則」(地球環境共生ネットワーク)など。2019年8月に最新刊「日本の真髄」(文芸アカデミー)を上梓。2022年(令和4年)春の勲章・褒章において、瑞宝中綬章を受章した。


 

 

 

 

 

 

沖縄のパイナップル畑

沖縄のパパイヤ畑

北海道新篠津村の大豆畑

北海道三笠市・EM活性液の葉面散布

北海道三笠市・水田へのEM活性液の流し込み

京都美山町の水田

沖縄・コマツナのハウス栽培。EM効果でハウスはいつも新品のよう。強度も高まっている。

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