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EMが確たる国策として機能するようになったタイ王国

前回はタイ国における世紀的な大洪水の浄化対策にEMが国策として活用され、その実施成果報告書が国防省と天然資源環境省から、また陸軍による汚水浄化プロジェクトの実施結果報告書について紹介しました。この成果を受けて、タイ国では多発する洪水汚水対策に対し、EMを活用することに異論の予知はなくなり、世界中にEMの力が広く紹介されました。

タイ国では、それらの成果を踏まえ、多くの市民ボランティアのEM活動を含め、今後のEM活動をさらに確たるものにするため、1冊の本にまとめることになりました。

私にもその本にタイ国におけるEM活動の総括のようなものを、タイに寄せる思いを含めて書いて欲しいという要望がきました。私はこの申し出に心から感謝し、以下のようなコメントを送付しました。

─ EMでタイ王国を世界に冠たる理想郷へ ─

2月下旬に国防省と天然資源・環境省による「中部14県の洪水被害地域における汚水問題緊急解決プロジェクト実施成果のまとめ」と陸軍による「洪水被害による汚水浄化プロジェクト実施結果のまとめ」を受取りました。その偉大なる成果について、心から敬意を表すると同時に関係者の皆様に感謝申し上げます。

タイ国にEMが導入されたのは1986年の10月です。世界救世教タイ国本部長であった故湧上和夫氏が、タイ国における自然農法や有機農業の普及にEMを活用し、タイ国の農民を幸せにしたいという強い思いで、当時、私の勤務していた沖縄の琉球大学農学部に訪ねて来られました。湧上さんは、沖縄県出身の著名な社会福祉事業家であり、また私も沖縄出身であり、EMも沖縄の農業を発展させるために開発された技術でした。

私は園芸学の教授として、沖縄の園芸の発展に尽力してきましたが、ランをはじめ、多くの鑑賞園芸植物や熱帯果樹の大半のものは、タイ国から導入されたもので、私自身もタイ国にお世話になり、タイ国が大好きでしたので、湧上さんの申し出を喜んで引き受けることにしました。当時のタイの東北部は、長年の干魃続きで塩害も発生し、農村は疲弊した状況にありました。

この問題の解決には、あらゆる有機物をEMで上手にリサイクルして、自給自足すると同時に、EMが持つ環境浄化や健康促進の力を活用すれば可能であると判断し、湧上さんと2人で農業省をはじめ、農業や福祉に関係する指導者の方々に説明を行い、世界救世教タイ国本部でEMを活用した自然農法のモデルを作ることになりました。

以来、私は年に4〜5回、タイ国を訪問し、タイ国を世界に冠たるEMモデル国家にするために積極的な協力を始めました。なぜならば、国民の幸福を心から願って行動される偉大なる国王と王室体制、それに連なった各々のお寺を中心とした信心深い人々、行政の壁を越える多様なキングプロジェクト等などはEMの活用によって王土楽土(ペンデイタン、ペンデイントン)を作るにふさわしい国の形になっていたからです。

1988年、湧上さんの尽力で、現在サラブリ県にある自然農法アジア人材育成センターがスタートしました。このセンターの開所式は陸軍の東北部のキングプロジェクトを担当している関係者も参加し、以後、陸軍からも多くの関係者がセンターで研修を受け、東北部でのEMの普及に尽力してくれました。

これまでに、このセンターで研修を受けた人々は10万人近くとなり、海外の50余の国々から研修に来られた人々は5千人余となり、タイ国のみならず、アジアのすべての国々はもとより、ヨーロッパ、アフリカ、米国など60余の国々から研修に参加しています。

そのセンターのおかげで、東北部を中心にタイ国のかなりの地域のキングプロジェクトにEMは活用されるようになりました。また、農村のほとんどの学校でも農業教育や環境問題の解決にEMが活用されるようになり、「足るを知る経済」を支える根幹的な力となるまでに発展してきました。

フラヌット氏を中心とする住宅公社のEMによる汚水処理事業は広大なダムをはじめ、居住区の汚水対策や衛生対策は世界的なモデルとなっており、ピチェット大将が行ったサケオ県、ウボン県の貧困農家の自立や南タイでの貧困農家を教育し自立させ、様々な社会問題を解決した実績は国連関係者も高く評価しています。

今や、タイ国は、住宅公社を中心としたEMの研修センターと南タイの陸軍のEMの研修センターを中心に、10万人余の人々がEMの総合的な活用法について研修を受けており、世界救世教の各地の教会や仏教協会をはじめ、個々人による自主的なEM研修も積極的に行われており、推計で100万人を超える人々がEMを学んでいます。

今回の100年に1度とも言われる大洪水に対し、国防省と天然資源・環境省や陸軍が一致してEMを活用し、洪水に伴う様々な衛生問題を解決しました。その成果は世界が注目しています。今回の世紀的な自然災害に対して、国家の新しい危機管理としてEMを活用したことは、国際的にも特筆すべきことであり、この実績が世界中に広がることを期待しています。

歴史的に見ると、このような偉大な成果は、国王の思いに賛同した湧上和夫氏の信念とサラブリの自然農法アジア人材育成センターに端を発したEMの活用をタイ国の人々が各々に発展させた結果であり、これからの新しい国造りの原点ともなるものです。天国にいる湧上夫妻も、この成果に満足し、大変に喜んでいると思います。

昨年(2011年3月11日)日本で発生した東日本大震災で被災地の衛生対策や塩害対策、さらには放射能対策にEMが大々的に使われています。また、放射能の内部被曝対策にはEM・Xゴールドが広く活用されています。それらの成果は、すべてEMボランティアの支援によるものです。タイ国のようにEMが国家の危機管理として活用されるためには、さらに時間が必要です。今回のタイ国の成果は、日本はもとよりEMを活用している多くの国々が学ぶ必要があり、本誌はその点においても極めて重要な役割を持っています。

EMは農業や環境のみならず、土木建築、資源エネルギー、医療、健康など、人類の抱えるすべての問題に対し、安全で快適、低コストで高品質で善循環的に持続可能な方法で解決する力を持っています。

本誌の出版を通し、さらにより多くのタイ国の国民がEMを理解し、EMの可能性をより極め、様々な分野でEMを空気や水のごとく使うようになれば、タイ国は必然的に望ましい未来型の理想的な幸福度の高い国家に発展するものと確信しています。

(2012年4月4日)
PROFILE
ひが・てるお/1941年沖縄県生まれ。EMの開発者。琉球大学名誉教授。国際EM技術センター長。アジア・太平洋自然農業ネットワーク会長、(公財)自然農法国際研究開発センター評議員、(公財)日本花の会評議員、NPO法人地球環境・共生ネットワーク理事長、農水省・国土交通省提唱「全国花のまちづくりコンクール」審査委員長(平成3年〜平成28年)。著書に「新・地球を救う大変革」「地球を救う大変革①②③」「甦る未来」(サンマーク出版)、「EM医学革命」「新世紀EM環境革命」(綜合ユニコム)、「微生物の農業利用と環境保全」(農文協)、「愛と微生物のすべて」(ヒカルランド)、「シントロピーの法則」(地球環境共生ネットワーク)など。2019年8月に最新刊「日本の真髄」(文芸アカデミー)を上梓。2022年(令和4年)春の勲章・褒章において、瑞宝中綬章を受章した。


Royal Army Clubで行われたEM活性液の配布場所には「EMによる汚水対策プロジェクト」の垂れ幕

バンコク ラカバン地区で行われたEMダンゴの投入

ワラヌット女史(中央)とピチェット大将(右)

洪水到達前に、対策としてタイ赤十字にEM1トンとEMダンゴが提供された

タイ北部管轄の陸軍にEMが提供された

ピサヌローク県のごみ処理場 洪水対策委員会の依頼で散布された

洪水後処理用に、タイ王国陸軍が無償配布したEM活性液のタンク

テレビのインタビューを受けるワラヌット女史

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