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EMの放射能吸収抑制効果を認めた福島県

すでに本誌の速報でも明らかなように、福島県農林水産部は民間からの提案による放射性セシウムの移行抑制試験の結果を5月17日にプレスリリースとして公式に発表した。その中でマクタアメニティのEMオーガアグリシステムの標準堆肥について明確にその効果を認めています。

チェルノブイリ原子力発電所の事故以来、さまざまな放射性セシウムの吸収抑制に関する研究が行われてきましたが、一般的な技術として、セシウムと類似の性質を持つ塩化カリウムを多めに施用する方法がとられています。今回のEM堆肥の結果は、効果的と言われる塩化カリウムよりも3倍以上も吸収抑制効果があり、統計的にも極めて有意という結果となっています。

この結果は10,000ベクレルの汚染土壌でEM堆肥を使うと、作物は1kgあたり7.0ベクレルの放射性セシウムを吸収したということであり、これまで述べたようなEMによる放射性物質の完全な吸収抑制にはなっておりません。この件については、EM堆肥のみではなくEM活性液との併用が望ましい旨を伝え、これまでの実績を県に示し、EMの併用をお願いしたとのことですが、液体の併用となると統計的な処理が複雑化するため併用は見送られたといういきさつがあります。

有機物の施用による放射性物質の吸収抑制効果は、ある程度は認められていますが、これまでの多種多様な試験結果から、塩化カリウムよりは、効果が劣るという結論になっています。チェルノブイリ原発事故の被災地では、その結果を受けて、多量の塩化カリウムが使われるようになりました。

塩化カリウムの主要成分は、植物の三大栄養素である窒素(N)リン酸(P)カリ(K)のカリ(K)です。一見すると極めて好都合のように思えますが、残念なことに日本の農地のほとんどがカリ過剰となっています。カリが過剰な土地に、さらにカリを加えると、作物は粗になり固くなりがちで、品質が著しく低下します。特に糖度の上昇を阻害するため、沖縄県のサトウキビの糖度の低下はカリ過剰が原因とされています。

そのような事例を含め、品質にこだわる農家では、カリの多用は品質低下に直結するということは半ば常識化しており、塩化カリウムなどによる放射性セシウムの吸収抑制対策には不都合な真実が潜んでいます。

加えて、塩化カリウムをはじめ、天然のすべてのカリウムには、ある一定以上の放射性の同位体が含まれています。チェルノブイリ原発事故の被災国となったベラルーシでは、放射性セシウムが作物に吸収されることを防ぐために大量の塩化カリウムを使った結果、土壌中の放射線の全体量が高くなり、さまざまな問題が出始めています。

一般的に農業に使われるカリウムに含まれる放射性同位体の放射線は微量のため人体の生理代謝には効果的に作用するものと考えられており、マイナス的作用はまったくないという認識があります。確かに、微量の場合はそのとおりですが、問題は、放射性のセシウムやストロンチウムが存在する場に塩化カリウムなどを多用すると、そのカリウムの同位体から発生する放射線が、放射性のセシウムやストロンチウムの放射線量をかさ上げしてしまうからです。

このようなことから、現在ベラルーシでは、施用したカリウム由来の放射線が問題となっており、塩化カリウムなどのカリウムを活用した放射性セシウムの作物への吸収抑制は、解決が困難な副作用を生みつつあります。これまで福島県で試験され、放射性セシウムの吸収抑制に、ある一定以上の効果(塩化カリ同等、またはそれ以下)が認められた資材は、すべてカリ濃度の高い資材となっています。

EM堆肥もカリ成分が低いわけではありませんが、有機物の自然循環となっているため、栽培を続けても、土中のカリウムが累積的に増えるわけではありません。したがって、今後の福島県や放射能汚染のホットスポットなどにおいて、安全で良質な農産物を生産するためには、EM堆肥とEM活性液を併用する以外に方法はないということになります。

これまでU−ネット通信やDNDなどですでに明らかなように、EM活性液の散布によって土壌や居住空間の放射線量はもとより、汚染されたイナワラや家畜の糞や落葉なども、堆肥化の過程で放射線を大幅に減らす効果が確認されています。事実、福島県におけるEM栽培農家は、その方法と栽培中のEM活性液の徹底的な活用で、放射線がまったく検出されない安全で高品質の作物をつくっています。

マクタアメニティのEMオーガアグリシステムは本誌でもたびたび、放射能汚染地帯でも放射能がまったく含まれない安全でかつ品質の高い作物が栽培できる農法として紹介され、消費者もその実績を認め始めています。このシステムを長年にわたって普及、研究に当たってきた幕田さんの功績にほかなりませんが、この方法は、農家なら誰でも即実行できるもので、トータルコストで考えると、従来の農法よりもはるかに優れています。

結論的なことを言えば、今回の福島県の試験結果から判断すると、地元で発生する多様な有機物をEMオーガアグリシステム仕様の堆肥にし、EM活性液を徹底して活用することによって、安全でかつ高品質で人々の健康を積極的に守る農産物が、全県にわたって生産が可能ということになります。

同時に、その生産体制を通し、環境全体を浄化し、川や海をきれいで豊かにし、放射能汚染対策も可能であるという福島県やホットスポット地域の農業の未来像が見えてきます。内部被曝対策を含め、EMの放射能汚染対策への活用は、すでに確たるものとなっていますが、その点に関する公的機関の認知を期待したいものです。

今回は主として放射性セシウム対策に焦点が当てられていますが、ベラルーシではストロンチウムが深刻な問題になっています。体内に入った放射性セシウムは体内に取り込まれても、汚染されていない食物をとり続けていると、半年内外でほとんどのものが体外に排出されると言われています。それに対し、ストロンチウムは体内で骨組織に取り込まれるため、長期にわたる内部被曝の原因となります。ストロンチウムは分析などが困難なため、わが国ではその実態が明らかではありませんが、ベラルーシの例から考えると、わが国でもストロンチウムの汚染は存在していると判断すべきです。

EMを施用し続けると、セシウムはもとより、ストロンチウムも作物に吸収されないことが明らかとなっており、ベラルーシでは、この点に関する期待が高まっています。EMの持つ放射能汚染対策のメカニズムは、単なる元素の置き換え論で説明することは不可能です。したがって、さらに踏み込んだEMの本質的な力、すなわち抗酸化作用と非イオン化作用と、有害なエネルギーを無害化し、使えるエネルギーに転換するというシントロピー(蘇生)現象から解明せねばなりません。

(2012年6月4日)
PROFILE
ひが・てるお/1941年沖縄県生まれ。EMの開発者。琉球大学名誉教授。国際EM技術センター長。アジア・太平洋自然農業ネットワーク会長、(公財)自然農法国際研究開発センター評議員、(公財)日本花の会評議員、NPO法人地球環境・共生ネットワーク理事長、農水省・国土交通省提唱「全国花のまちづくりコンクール」審査委員長(平成3年〜平成28年)。著書に「新・地球を救う大変革」「地球を救う大変革①②③」「甦る未来」(サンマーク出版)、「EM医学革命」「新世紀EM環境革命」(綜合ユニコム)、「微生物の農業利用と環境保全」(農文協)、「愛と微生物のすべて」(ヒカルランド)、「シントロピーの法則」(地球環境共生ネットワーク)など。2019年8月に最新刊「日本の真髄」(文芸アカデミー)を上梓。2022年(令和4年)春の勲章・褒章において、瑞宝中綬章を受章した。


 

 

 

コマツナへの移行係数
平成23年福島県「農用地等の放射性物質除去・低減技術実証事業」の試験結果(第2報) 成績書(EMオーガアグリシステム標準たい肥)より引用

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

EMオーガアグリシステムによる栽培されたコマツナ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

比嘉教授の著書『シントロピー【蘇生】の法則』

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