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第17回全国EM技術交流会 北海道大会in札幌

17年前、熱海でスタートした全国EM技術交流会は年々参加者が倍増したため、第3回以降はパシフィコ横浜と京都国際会議場で東西交互に行われるようになりましたが、この活動を全国に広げるため、第14回から各地方で開催するようになりました。

今回のキャッチフレーズは、今、伝えたい、北の大地から、あなたへ「未来に生きる 生命のために 美しく豊かな地球を!」EMがはぐくむ生命のきずなです。

11月3日、札幌コンベンションセンター大ホールに1000人あまりの参加者があり、EM市もにぎわい大盛況となりました。北海道庁、札幌市の他、多数の市町村やマスコミ関係者などの後援をいただき、このイベントは全道的なものともなりました。

事例集では全道から67件、その内容は多岐にわたり、北海道のEM情報百科的な役割も果たしています。本交流会では極めて独創的な5件の事例が発表されました。市町村におけるEM活用事例はJA北海道の先進的な役割を果たしている新篠津村の現況です。

新篠津村の農地は5160ha、耕作放棄地はゼロ、JAS認証21件、その他大半の農家がエコファーマー以上の成果を上げ、名実ともに日本を代表するクリーン農業地帯となっています。この刮目すべき成果は、EMの導入に当たって独自の実用化試験を行い、総合的な分析や評価を行ったことと、事前の研究会の活動と普及のためのシステムづくりが同時進行し、村、農協、生産者の確たる協力態勢を構築したことに尽きます。

私もスタートの平成6年と10周年の平成16年の2回にわたって新篠津村で講演を行いましたが、その後のEM活用は加速的に発展し、農業のみならず環境や福祉、食品加工などにも応用例が広がっています。この新篠津村の方式は北海道に限らず、日本のすべての市町村の農業振興のモデルとなるもので、今後のTPPを含めた貿易自由化対策の解決策にも通じるものです。

2例目は旭川市に隣接する日本最寒の地である幌加内町で新規就農で成功した宮原光恵さんの感動的な発表です。冬はマイナス30℃以下、夏は30℃以上になり6月中旬までは霜の心配があり、9月20日頃には早霜があり、10月に初雪、11月には積雪となり、2メートル以上の豪雪地帯で、周年多湿、農業にまったく不向きな条件下で、さまざまな工夫とEM活用技術を組み合わせ、ソバ、カボチャ、馬鈴薯、トマト、玉ネギなどを栽培し、自立的な経営を成功させた事例です。

パイオニアとはかくあるべし、まさにプロフェッショナル精神の賜物といえるもので、この情報は限界集落の解決策になるばかりでなく、新規就農に対し具体的な力となり、大きな希望と勇気を与えてくれるものです。

3例目は川上郡標茶町の小泉牧場の事例です。経営者の小泉恒男さんは、日本酪農青年研究連盟の会長を10年あまりも務め、農水大臣賞、日本農業大賞など数々の受賞に輝いたわが国の酪農界のトップリーダーです。

この発表の注目すべきは牛乳を知り尽くしたプロ中のプロがEMを使いこなすとどのような成果になるのかという驚嘆すべき事例です。成牛79頭、EM導入以前の平成17年の、1頭あたりの年間乳量は8955キログラム、次年度から9000キログラムを超え、平成22年には10161キログラムを達成しています。

前人未踏のこの大記録は家畜の健康、廃棄物の牧草への効率的なリサイクル、畜舎の衛生管理やサイレージのさまざまなEM活用などの総合力によるもので、乳量だけでなく乳質の改善効果も高く、酪農へのEM活用の究極ともいえるものです。この成果が北海道はもとより、日本全域に広がれば、酪農革命に直結するばかりでなく、有機農業の推進、河川や海の浄化と生態系の復活と自然資源の増大に計り知れない力を発揮するといえます。

もちろん、TPP対応にも大きな力となりますが、抗生物質などの畜産薬品をまったく使用しない理想の酪農の姿も、近い将来実現できると思います。

4例目は「子どもたちとEM活用」と題して、旭川市の高野雅樹さんの、学校へのEM活用の成功事例の報告です。EMを教育現場に導入する場合、当事者のEMの理解度と普及の信念、学校教師やPTA関係、教育委員会などへの理解のはかり方、カリキュラムの組み方など、極めて具体的で納得いくものでした。高野さんの言われるような方法や手順で進めれば、学校現場におけるEM活動は極めてスムーズとなり、多くの人々に喜ばれ、そのことが子供達の将来の環境対策力と、健康生活ともつながることになります。

最後の発表はEMボカシネットワーク北海道支部事務局長の勝俣規正さんのEMボカシネットワーク北海道支部の活動報告です。北海道支部は支部としての研修システム、自立のための地域との連携などさまざまな先進的な事例があります。

中には有機JAS認証を取り、父兄を巻き込んだ発展的な事例も続出しています。福祉施設のあり方については、拙著「新・地球を救う大変革」にも詳しく書いてありますが、農地の活用が比較的容易な北海道ですので、望ましい福祉施設のあり方の実現に最も近い位置にあり、今後の展開を期待しています。

以上、発表された事例に簡単なコメントを述べましたが、EMは北海道の将来のあり方を決めるほどに着実に根づいて成長しています。この背景には北海道道庁をはじめ、元道庁農政部長の福田昭夫さんの力強い後押しと長年にわたるEM運動に対する積極的な協力があったことが大きな成果を生み出しています。

このようなことから北海道大会事例集2012は日本全県に配られるべく、第1級のEM事例集となっています。幸いにして北海道EM普及協会で、その事例集を増刷してEM関係者の期待に応えることになりました。

公的機関にEMをすすめたい場合の決め手になる内容がすべてそろっていますので、関係者の方々の、この事例集の活用をおすすめします。

(2012年12月3日)

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未来へ生きる生命のために 美しく豊かな地球を!
PROFILE
ひが・てるお/1941年沖縄県生まれ。EMの開発者。琉球大学名誉教授。国際EM技術センター長。アジア・太平洋自然農業ネットワーク会長、(公財)自然農法国際研究開発センター評議員、(公財)日本花の会評議員、NPO法人地球環境・共生ネットワーク理事長、農水省・国土交通省提唱「全国花のまちづくりコンクール」審査委員長(平成3年〜平成28年)。著書に「新・地球を救う大変革」「地球を救う大変革①②③」「甦る未来」(サンマーク出版)、「EM医学革命」「新世紀EM環境革命」(綜合ユニコム)、「微生物の農業利用と環境保全」(農文協)、「愛と微生物のすべて」(ヒカルランド)、「シントロピーの法則」(地球環境共生ネットワーク)など。2019年8月に最新刊「日本の真髄」(文芸アカデミー)を上梓。2022年(令和4年)春の勲章・褒章において、瑞宝中綬章を受章した。


1000人を超える参加者が詰めかけた

 

農産物の販売などで賑わうEM市

 

都市住民との交流事業も盛んな新篠津村

 

幌加内町の宮原さん宅

 

小泉牧場の牛舎

 

子どもたちとボカシづくりをする高野さん

 

いきいきと作業をする福祉施設の皆さん

 

増刷予定の事例集2012 ※取り扱いは北海道北広島市のイーエム・エコ(011−375−4234)をはじめ全国のEM販売店、EM情報室にて

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