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ブータンの学校教育におけるEM活用

PROFILE
ひが・てるお/1941年沖縄県生まれ。EMの開発者。琉球大学名誉教授。国際EM技術センター長。アジア・太平洋自然農業ネットワーク会長、(公財)自然農法国際研究開発センター評議員、(公財)日本花の会評議員、NPO法人地球環境・共生ネットワーク理事長、農水省・国土交通省提唱「全国花のまちづくりコンクール」審査委員長(平成3年〜平成28年)。著書に「新・地球を救う大変革」「地球を救う大変革①②③」「甦る未来」(サンマーク出版)、「EM医学革命」「新世紀EM環境革命」(綜合ユニコム)、「微生物の農業利用と環境保全」(農文協)、「愛と微生物のすべて」(ヒカルランド)、「シントロピーの法則」(地球環境共生ネットワーク)など。2019年8月に最新刊「日本の真髄」(文芸アカデミー)を上梓。2022年(令和4年)春の勲章・褒章において、瑞宝中綬章を受章した。

ブータンにEMが導入されたのは1990年、EUをはじめ海外から派遣されてきた専門家(日本を含む)は、EMの活用には反対の立場にありましたが、現地試験の結果は予想を上回る成果となったため、ブータン政府はEMを積極的に支援するようになりました。人口70万内外、平地は極めて少なく、山また山の国で交通のアクセスも限られています。改めて述べるまでもなくブータンの国是は幸福度を指標にした国造りです。

ブータンは国全体が世界自然遺産となっているため、化学肥料や農薬をやめて有機農業への転換を進めています。EMも生ごみリサイクルや家畜の糞尿の有機肥料化に広く活用されるようになってきましたが、この広がりは学校の自給農園システムが大きな力となっています。

ブータンの高校の大半は全寮制となっています。厳しい山岳地帯で交通の便が限られているからです。そのため、各学校には寮生活のための自給農園があり、その農園でEMの活用が積極的に行われています。卒業して農山村部に戻る生徒も多いため、APNAN(アジア・太平洋自然農業ネットワーク)が積極的に支援することになりました。

(APNANとは、1989年、タイ国のコンケン大学で行われた自然農法とEM技術の国際会議を記念して発足した組織。サラブリ県にある自然農法アジア人材育成センターのモデル農場で数々の国際研修会や国際会議を行い、ブルネイ、中央アジアを除くすべての国々で自然農法とEM技術の普及を行っており、設立当初から私が委員長の任に当たっている。)

まず2002年にスタートした世界食糧デー(WFD)を記念して、これまでEMを活用した各高校の自給農園のコンテストを行い、ヒガトロフィー(Dr.Teruo Higa賞)と賞金で表彰することになり、20校が参加しました。その結果、30あまりのすべての高校にEMは広がり、ブータンの自然農法の大きな力となっています。

この運動は小中高を含む学校農業プログラムの行事と同時に行われるようになり、その後FAO(国際連合食糧農業機関)も協力するようになり、EMは小中学校にも着実に広がり始めています。以下はAPNANの佐野雄次郎指導員の報告です。

SAPの優秀校の表彰式 (2013/9/16)

今回、学校農業プログラム(以下SAP)の年間の最大行事である優秀校の表彰式に参加した。SAPには、ブータン国内にある551校のうち、約190校が参加しており、その中でHSS(日本の高校に近い)、LSS(日本の中学に近い)、小学校の学校菜園の取り組みで、最も優秀である学校への表彰が行われた。EMを使用している学校は100校ほどとのことであった。

場所:ガサ県ビジション学校(Bjishon MSS)
主なプログラム:

  1. 校長 歓迎の挨拶
  2. RNR研究評議会(以下CoRRB)代表Dr.Tashi Samdupのスピーチ
  3. ガサ県知事Dasho Sonam Jigmeのスピーチ
  4. ビジション地区の有機農産物、加工品の展示販売
  5. ビジション学校の生徒たちによるさまざまな催し物(行進、踊り、ディベート:地球温暖化は農業に影響するか否か、農家クイズ、劇など)
  6. SAPの表彰式:
    APNANからは、タシガン(Tashigang)県のUdzromg LSSにLSSの部の最優秀賞が贈られた。HSSの部ではFAOより、サムチェ(samtse)県のTendruk HSSに最優秀賞が贈られた。小学校の部では、チュカ(Chungkha)県のCPSにWFP(国連世界食糧計画)より最優秀賞が贈られた。なお、今回の賞金は、すべてFAOから支援されたものである。
主なスポンサー:FAO
※CPS(Community Primary School):1〜6年生、LSS(Lower Secondary School):1〜8年生


世界食糧デーにガザ県Bjishon MSSで行われたSAPの優秀校の表彰式の様子。
上段は、Bjishon MSSの校舎の様子。中段左は、ガザ県の県知事。中段右は、同校の生徒が開会式の行進で模ったWFD(世界食糧デー)の文字。中段左の左は佐野指導員。下段は、表彰式の様子。APNANから比嘉トロフィーがUdzromg LSSに渡され、その学校の代表者が、感謝のスピーチを行っているところ。



世界食糧デーにガザ県Bjishon MSSで行われたSAPの優秀校の表彰式の様子。
上段左は、Tendruk HSSへの表彰の様子。上段右は、トロフィーで、左からHSS用、LSS用(比嘉トロフィー)、CPS用。中段は、表彰後の記念撮影。下段は、式典中に行われた同地区の有機農産物の販売の様子。様々な野菜やシイタケ、チーズなどが販売されていた。なおガザ県は、有機農業県という事で、ここで生産されている農産物はすべて有機農産物とのことであった。



上段は、世界食糧デーに行われたSAPの優秀校の表彰式の様子で、上段左は、展示販売されていた野菜。上段右は、生徒の出し物の一つであるディベート大会「地球温暖化は、農業に影響するか否か」。
中段は、視察先先のティンプーの下水処理場。川沿いにオープン形式で作られている。EMで悪臭対策を行い、その結果を数字で表せれるプロジェクトを模索中。
下段は、視察先のプナカHSSの農場の様子。作物の栽培状態はとても良いようであった。


(2013年11月6日)

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