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山下一穂 土佐自然塾塾長・山下農園代表
天才カズホ君の晴れ掘れ日記
第1回 田舎からの国づくり

毎年のことだが、正月が来ると「ヨッシャー!」と言う気持ちになる。何がそんなにめでたいのかというと、起点は一週間ほどさかのぼった冬至にある。この日を境に日一日と陽が長くなるのが何より楽しいのだ。「底に着いた、あとは上昇するだけ!」と言う感覚。
平成10年の秋に新規就農して8年余が過ぎたが、振り返ってみると、苦しいときにはいつもこの感覚を思い出して乗り切ってきた。

有機のがっこう
白菜を持つ塾生

「奇麗で美味しい本物の有機野菜をもっと食べたい」「子どもや孫たちに、農薬に汚染されてない豊かな大地を残したい」。そのような声が聞こえてくると、「ヨッシャ、ぼくちゃんに任せなさい」と、頼まれもしないのに勝手に張り切って、なぜか有機農業の振興には後ろ向きな行政や教育機関にチョッカイをだし、ハッパをかけてきた。「農薬や化学肥料なんて使わなくても、美しい有機野菜の安定生産はできるんだぞ〜」って。

調子に乗って、就農5年目には拙著「超かんたん無農薬有機農業」を出版。その秋には、とうとう橋本大二郎高知県知事が、「有機農業に専門的に立ち向かう部署を立ち上げ、研修制度を充実させる」と約束してくれた。そして、有機のがっこう「土佐自然塾」が平成16年夏に設立され、ぼくが初代塾長に就任し、山下農園の経営と掛け持ちながら、直感勝負で走り回っている。

このがっこうには「田舎からの国づくり」という、大きなテーマを掲げている。具体的には「日本の農業を変える」「消費者の健康を守る」「美しい日本を取りもどす」。そのための突撃隊員を養成するのが、がっこうの仕事。突撃と言っても、何も武器や弾薬を持って突撃するのではなく、有機農業で就農して一定の所得を上げ、次の世代につないでいけるような持続可能な農業を再生する。そのための先発突撃隊員だ。
本来の農業は、一時代の一世代が生計を立てるためだけの職業ではなく、次の世代、次の世代へと何百年のスパンで繋いでいく産業であり、文化であったはず。農家とは「生命の繋ぎ役」でもあるのだ。

話を戻そう。深々(しんしん)と凍てつくような空気や、寒風吹きすさむ日々はまだまだ続くけど、ふんわりと漂う春風の香りをキャッチしたときのときめき感。幾重にも重なる山襞の光と陰が作り出す精妙なグラデーションとその変化。コントラストが時間を追って変化する稜線と空の境、流れる雲。それらの中から、春の気配を瞬間的に感じたときの高揚感は、寒さで冷え切った体の芯に暖かい灯をともしてくれる。雪の中で光を求めてロゼット状となった作物も、じっと寒さをやり過ごしている様に見えるが、新芽には次の世代に伝えるべく小さな生命が着実に芽吹いている。けなげなではあるけれど、そのしたたかさからは、大いなる勇気をいただく。

もうこれ以上暗くも寒くもならない、あとは少しずつ明るく暖かくなるだけ。もちろん、まだまだ寒い日々は続くけれど、五感をとぎすませれば、春の予感に胸が躍る。「暗中に光りあり」そんな感覚がぼくは大好きだ。

有機のがっこう校舎前で
有機のがっこう校舎前で。看板の文字は橋本知事の直筆(じきひつ)
掲載日:2007年1月
山下一穂 プロフィール

やました・かずほ
1950年 高知県生まれ。28歳まで東京でドラマーとして活動。その後帰郷し、高知市内で学習塾を経営。体調を崩したためにあらゆる健康法を試してみたが、最終的に食と農の問題に行き着く。1998年 本山町にて新規就農。2006年4月 高知県と地元NPO黒潮蘇生交流会(山下修理事長)との協働で「有機のがっこう」を始め、同年12月、第1期生14人の中8人が県内で就農。今春から第2期生11人が研修中。

かんたん無農薬 有機農業

著書「超かんたん・無農薬有機農業」は自ら開拓した「超自然農法」での有機農法をユーモア溢れる語り口で書かれた実践本。野菜20種の栽培法収録のCD 付き。


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EcoPure56号 「美しい日本の再生を」


外部リンク
「有機のがっこう」土佐自然塾HP
http://www.tosa-yuki.com/

山下農園HP
http://harehore.net/



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