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「有機農業宣言 東京集会」に500人集う
「地域に広げる有機農業フォーラム」も開催

「有機農業宣言 東京集会~みんなで広げる有機農業~食・農・環境の未来をゆうきの一歩から」(主催:NPO法人全国有機農業推進協議会(全有協))が、6月29日、東京サンケイプラザホールで開催。全国から農業者、消費者、流通関係者など約500人が参集した。全有協は、平成20年度有機農業総合支援対策事業団体として採択され、同集会も同事業の一環として行われた。


全有協の金子美登代表は、「有機農業を進めていくことは、食の危機から救うことであり、この国を救うことである。今日をキックオフの日にしたい」と挨拶



田下さんは「研修生にはIT産業経験者が多く、農業の時代になっていることを実感している」と語った







第4分科会は、会場に入れないほど盛況ぶりで、消費者の有機農産物への関心が、流通や加工業者を動かしている現れとも受け取れた

ツルネン・マルテイ参議院議員・有機農業推進議員連盟事務局長が、「推進法成立は草の根運動が実った結果。国民皆で法律に魂を入れて育てよう。私たち議員も法律をさらに整備していきたい」と挨拶。今井登茂樹全有協事務局長が有機農業推進までの一連の流れを説明。参加者は、情報共有することで有機農業への認識を新たにした。

シンポジウム「有機農業の明日を語る」には、パネリストとして、有機農業生産者の金子美登さん(埼玉県小川町)、田下三枝子さん(同)、井村辰二郎さん(石川県金沢市)が、行政担当者の福田英明さん(農林水産省環境保全型農業対策室長)、学識経験者の西村和雄さん(NPO法人有機農業技術会議代表)が登壇。中島紀一さん(茨城大学農学部教授)のコーディネートでそれぞれの立場から、有機農業の現在と未来を語った。

金子さんは、農薬の空中散布を中止させた母親たちの力に注目して、「農家だけでは解決しない問題は地域住民の力が必要である。地域内自給が成立して地域の潤いが増した」などと体験を話した。金子さんの農場の研修生であった田下さんは、現在社員4人研修生4人の「風の丘ファーム」を経営。「町では26軒の有機農家があり、仲間が増えると有機農業の可能性が広がる」と語った。

脱サラ11年で大規模有機JAS認定農家であり、「金沢大地」という販売会社代表である井村さんは、135haの畑と20haの水田を有機で耕作。「1000年先を考えた土づくりを行うこと、穀物の安定供給基地となること、農村と都会を結びつけること、この3点を考えると、有機農業は農業を続けていくための手段だ」と話した。「耕作放棄地はどこでも耕したい」というエネルギッシュな行動力に会場から拍手が沸いた。

新潟県の農家の息子であると自己紹介した農水省の福田さんは、「土という観点から有機農業は空気中の炭素を固定し、温暖化対策に効果があると判断できる結果が出てきた。これは国民の利益に最大の貢献をすると思う。物質循環の考え方からすれば、環境保全型農業の集約は有機農業に行き着くだろう」と行政の立場から有機農業の未来を語った。

有機農業の新規参入促進事業を行うNPO法人有機農業技術会議の西村さん(京都大学農学博士)は、「『あんたんとこ、農薬使っているの?古いね』という時代が来る」とユーモアたっぷりに発言し、会場を笑いの渦に包んだ。中国大地震による影響で、化学肥料の主成分であるリンが輸入されないことや、石油高騰で化学肥料の価格が上がることなどに触れ、少ない資源で国民の食料を賄うには、土を再生させる資材をどうまわすかが問題と指摘した。

また、ゲストコメンテーターの中地高子さん(モデル)は、ロシアの自給菜園「ダーチャ」のサポーター。「ロシア人の6割は、自分で畑を耕している。ダーチャはその菜園の名前。日本人も少ない土地でもいいから、作物の種をまき、生命を育てて自分の生命も育てたい。癒しにもなる」と、ダーチャを国民運動にしたいと提案した。

第2部は、4分科会で「みんなで語ろう有機農業第Ⅱ世紀・有機農業を広げよう」が行われた。分科会のテーマは、次の通り。 分科会1 有機農業への参入促進「私も有機農業で行きたい!」 分科会2 仲間づくり「若者の有機ネットワークを作ろう!」 分科会3 学校給食「給食を有機農産物で!」 分科会4 流通・加工「もっと有機農産物を食べられるように!」

今後は、このような実践的なワークショップを含めた集会が全国各地で開催される予定。

●キーワードは地域・自然・ネットワーク

同集会前日には、「地域に広げる有機農業フォーラム」(主催:全有協)が、JAビル全中大会議室で行われた。有機農業モデルタウン事業に採択された地域の農業者、行政関係者、市民など100人を超す関係者が集まった。このフォーラムは、推進法成立後、各地域で有機農業への動きが始まっていることから、それぞれの体験や情報を交換し合い、知恵を出し合おうと行われたもの。今回は、全国連絡会設立のための準備会となった。

中島潔農林水産省環境保全対策室課長補佐が、有機農業総合支援対策事業について報告。今後は、市町村の受け皿づくりに力を入れること、45団体の事業内容については後日HPに情報公開することなどを報告した。

続いて、ベストセラーとなっている『地域の力―食・農・まちづくり』の著者・大江正章さんが講演。有機農業をはじめとする第一次産業が地域に広がり根づくことによってもたらす影響や新しい動きについてエピソードを交えて具体的に語った。

有機農業が今後めざすことについて、①対立から協働へ、②地域づくりの主体になること、③有機農業が法人に広がっていることを踏まえて、すべて仲間とすること、④農の理解者を育てること、⑤有機農業こそ本来の農業であることを認識することをあげて、有機農業を核とした地域づくりの必要性を強調した。

さらに、有機農業モデルタウンに選ばれた愛媛県今治市職員・安井孝さんが、地産地消・食育・有機農業の3本柱として地域の自立をはかる取り組みを話した。「今治市食と農のまちづくり条例」を持つ市が、推進法によってさらに動きが加速されており、全国から視察が絶えないということであった。


全国各地から集まった有機農業関係者が発言。貴重な交流の場に
最後に参加者の多くが、3分スピーチを行い、地域で行われている有機農業への取り組みを次々に報告。国、県、市町村への通達や予算措置の遅れなど、行政の問題点も指摘されたが、おおむね順調なスタートを切ることができたという内容であった。 惜しくもモデルタウンの採択にはもれた神奈川県三浦市半島まちづくり協議会代表の川島勝徳さんは、「皆さんの活動を参考に挑戦します。次世代のためにも儲かる有機農業をめざしたい」と抱負を述べた。

(2008/7/15)


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