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「地域がささえる食と農 神戸大会」開催
「産消提携」テーマの国際会議


有機農業と提携の歴史を語る保田教授
「地域がささえる食と農 神戸大会」が、2月18〜22日兵庫県神戸市の神戸学院大ポートアイランドキャンパスで開かれた。この大会は、担い手不足や限界集落の拡大など農村が疲弊すると同時に都市労働者の経済状況が悪化する中で、有機農産物を媒介に命を支え合う「産消提携運動」について改めて考えようと企画したもの。期間中、豊岡コウノトリの郷ツアーや丹波市島へのオーガニックツアー、各種シンポジウム、有機農業政策公開討論会など、多彩なイベントが行われ、15か国の海外ゲストも含む延べ1500人が参加した。

20日には、NPO法人全国有機農業推進協議会と「農を変えたい!全国運動 関西地域ネットワーク」が主催する「第5回農こそ!コミュニティー」が開催され、有機農業や提携運動の専門家で神戸大学名誉教授の保田茂さんが「有機農業の歩みと到達点」をテーマに基調講演を行った。

保田さんは70年代初頭、食品公害問題などを契機に産消提携運動を始めた経過を報告。食べ物を商品としてとらえる「市場主義」を否定し、大量生産・大量消費の暮らしを反省する生産者と消費者の「自己批判」などが日本の有機農業運動の特徴と指摘した。「デフレ経済の下で、消費者の理解と協力が今こそ必要だ。薬に頼らない健康な体を保つためにも、ミネラル豊富な有機農産物を食べることが、これからくる超々高齢化社会にはなによりも重要だ。生産者と消費者がつながる提携の思想を再構築し、有機農業を拡げたい」と語った。


社会に責任をもつ市民が農家を支えると語るURGENCI理事のアンドリュー・カローリさん

多様なアプローチをまとめた7人のコーディネーターたち
さらに、今では世界に広まってきた「提携」についての報告として、イタリアのURGENCI理事・アンドリュー・カローリさんが「市民と自治体の協働で広めささえる食と農」をテーマに、環境保存型農業を行う農家と加工業者をネットワーク化して、会員がボランティアで支えるGAS運動を紹介した。日本からは、全有協代表の金子美登さんが「参加する食と農 地域のささえ方提案」と題して、町ぐるみで有機農業を行う小川町の事例を紹介し、「都市工業文明が限界になる中、農業と村落共同体を守り育てる参加型の新しい文化を生みだそう」と呼びかけた。

他、数名からの報告や事例発表を受けて、その後7分科会で活発な議論がなされた。テーマは下記の通り。

1.地域連携:農商工でささえあう食べ物ネットワーク
2.食農教育:未来への提言〜有機農業がはぐくむ子どもたち〜
3.地域の担い手たちの挑戦〜これからの食と農の可能性をリアルに考える〜
4.生物多様性を育む有機農業:田んぼの生き物調査から見えてきたこと
5.オーガニックマーケットにおける提携・PGA・認証
6.種をめぐる自立:種子を農民の手に
7.パートナーシップ

分科会終了後、「食と農の様々な問題は食べる側が変わることで解決できる」という視点が提起された。そのためには、まず地域のものを食べること。田んぼは単なる生産の場ではなく、公共のものとして、生産者だけではなく地域住民で守ること。遺伝子組み換えなど、種が農民の手から奪われていく現状をとめるために今年10月に名古屋で開催されるCOP10(生物多様性条約第10回締約国会議)に「種の保存」を問題提起すること、などが提案された。

第4回産消提携国際シンポジュウム
責任ある生産者と自立した消費者がつながろう


食と農の問題の根っこは世界共通

将来は国を越えた地域のネットワークが重要
21日には、「第4回URGENCI産消提携国際シンポジウム」が開催された。URGENCIとは、小規模の家族農業を支援し、農村と都会の住民間の社会的連帯をはかり、社会の貧困と戦うために組織された国際団体。シンポジウムでは、アメリカやオーストラリアで提携型有機農業を進める農家の報告や、「地域をささえる食と農のしくみ」などをテーマに一般参加者約500人が討議に加わる時間などがあり、終始会場は熱気に包まれた。

基調講演では、アメリカの提携実践有機農家であり『CSA市民ガイド』の著者・エリザベス・ヘンダーソンさんが、CSA(地域が支える農業)の世界的広がりについて報告。アメリカでは、日本の「提携」をモデルに、現在約1700農場、およそ10万人の消費者が関わっている。イギリスでは、ソイル・アソシエーション(土壌協会)が「地域を耕そう」プロジェクトとして、アメリカ同様のCSAを立ち上げている。フランスでは、AMAP(農民農業を守る会)が1000以上立ちあがり、カナダ・ケベックでは、エキテルという団体が3万3千人の会員世帯を擁するまでになっている。先進国だけではなく、南米、アジア、南アフリカなどにも広がっている。

ヘンダーソンさんはさらに、「国によっていろいろな呼び方があるが、グローバリゼーションの下の抑圧に農家と市民がどう対応したかはとても似ている。お互いに直接支えあうこと、同じ理想を持つ市民がつながることが、今一番世界に必要とされていることだ」と話した。

パネルデスカションでは、消費者団体、アースデイマーケット運営、生産者、

大会宣言を読み上げる高校生
提携活動の代表者らが、それぞれの経験を語り、情報の交換を行った。その中で、「食品公害を追放する安全な食べ物を求める会」(神戸市・会員300人)の北野多恵子さんが、提携先の丹波市市島町に「ゴル フ場建設」が計画された時に「市島の自然と水を守る会」を結成し地元と連帯したこと、阪神大震災時、提携先の市島有機農業研究会のメンバーがいち早く駆けつけてくれたことなどを通して、「提携」の真髄は人と人との絆にあると語った。

最後に兵庫県豊岡市の高校生が英語と日本語で「私たちは、顔の見える関係にこだわる提携思想を深め、世界の提携ネットワークを強め、有機農業を広めていくことによって、生命と地球に責任を持つことをここに宣言します」と大会宣言を読み上げて、2日間の幕を閉じた。

(2010/3/6)
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