会場となった七ヶ浜町国際村ホール

感謝の挨拶をする相沢東北EM普及協会会長

国会内での動きを紹介する高橋議員

事例報告の講評を行う比嘉教授
第18回全国EM技術交流会東北大会in七ヶ浜(主催:第18回全国EM技術交流会東北大会実行委員会・後援:宮城県、七ヶ浜町、多賀城市、塩釜市、利府町、全国EM普及協会、東北EM普及協会、公益財団法人自然農法国際研究開発センター、㈱EM研究所、㈱EM研究機構、㈱瑞雲)が3月15日七ヶ浜国際村ホールで開催されました。この大会は平成8年より、EM技術の研鑽と普及を目的に毎年全国各地を会場にして行われています。今回は、東日本大震災から3年目が経過した宮城県七ヶ浜町を会場に「生きがいのある新しい東北の復興を未来の子どもたちのために 〜“人との心の絆”をたいせつに〜」をテーマにして、全国から東北の復興を願う人々約600人が集いました。

開会にあたり、震災で亡くなられたすべての御霊に参加者全員で哀悼の意を捧げた後、地元七ヶ浜を拠点として活動するパーカッションアンサンブルグループ、Groove7の子どもたちの元気な演奏で幕をあけました。本大会の実行委員長である相沢孝弘東北EM普及協会会長が「ここまで東北の復興にご尽力いただいた全国のEM関係者に心から感謝するととともに、今大会が復旧から復興へと推進する大きな力となると信じている」と挨拶しました。渡邊善夫七ヶ浜町町長が謝辞と復興を力強く宣言(平正美副町長が代読)し、岩手県でEM活動を長い間行っていた高橋比奈子さん(現・参議院議員)が国会内に有用微生物利活用推進議員連盟が発足したことを報告しました。

事例発表は、被災地でのボランティア活動、農地の塩害克服、養殖水産物の復活の3事例、ロシア沿岸州EMセンターと㈱EM研究機構災害プロジェクトから、震災に関する活動報告がありました。
最後に登壇した比嘉照夫琉球大学名誉教授は、「未曾有の災害の中で、心をあわせて復興に立ち上がっているみなさんに敬意を表したい。未来は、人間以外の生物多様性をどう回復させるかにあるが、これはEMを徹底して使うことで解決できると震災の経験で再認識させてもらった。今までの経験をもとにEM技術を組み立て社会化できるよう関係者の連携をはかりたい」と話しました。
世界の非常時にEMが定着してきたことを再確認し、今後も東北の復活のために心をあわせていくことを誓う大会となりました。
会場では、震災時ボランティアとして七ヶ浜町を訪れた参加者が当時交流した町民と再会する場面も見られました。なお、来年の第19回EM技術交流会は、京都で開催されます。

※第18回全国EM技術交流会東北大会in七ヶ浜の優良事例を掲載した事例集(500円+税)は、EM情報室でも取り扱っています。

事例1 被災地石巻でEMパワー全開
EMエコクラブ宮城 及川良市
石巻市は、市内の中心部全域と沿岸部が水没。死者3,518人、行方不明者442人の甚大な被害にあい、ライフラインは完全に停止。雪が降る中、およそ56,000人が着の身着のままで避難した。現在でも、仮設住宅に7,122世帯が入居している(平成25年11月現在)。EMエコクラブの会員15名(当時)のメンバーのほとんどが被災し、茫然としているところに自然農法国際研究開発センター東北地区普及所内に設置された「大崎EM支援センター」から、EMの無料提供とボランティアの申し出

震災翌日の自宅周辺

住宅の庭先にEM散布
があり、これを機にEMの散布活動を開始した。7月には、ヘドロのニオイがきつくなり、ハエや蚊が大量発生。住宅や学校、集会所など公共施設など、500件以上を超える要請に応じた。散布後は、「ヘドロの中に寝ているようだったが、これで眠れる」と感謝された。

寄贈された小型動力噴霧機で、瓦礫や車輌、化学物質などが大量に流れ込んだ中里川や東松島市の定川などにEM活性液を投入。現在も、地元の小学校児童と共にEM活性液やEM団子で河川の浄化活動を行っている。また、震災前から学校のプールにEM活性液を投入していたが、震災時にこのプールの水がトイレの水や洗髪や洗濯に役立ったことを教訓に学校のプールへのEM活用をすすめている。EM活動を通して全国の多くの方々や地域の方々と知り合い、人と人との結びつきを強く感じる。これからも、生きがいと希望を与えるEMを通して、自然の力の大切さを子どもたちに伝えていきたい。

比嘉教授講評
EMが震災に使われたのは、阪神淡路大震災時の仮設トイレの悪臭対策が最初で、それ以後、台湾やロシア沿岸の災害に活用され、スマトラ沖地震では、遺体安置所でEMを活用した。この体験をもとにタイではEMで危機管理をやろうと決め、タイ洪水では衛生問題を解消した。この経験の上にこの震災が起こり、EM関係者はすぐにEMの供給などを行えた。日常的にEMを使っていることが、非常時に役立つ。この経験を子どもたちに伝え続けて欲しい。


事例2 震災でEMの素晴らしさを知る
NPO法人いしのまき環境ネット
齋藤義樹(石巻市・宮司)

代表の齋藤義樹さんと千葉万里子さん
同ネットは、平成17年に設立。地域の環境浄化運動をはじめ、植樹事業、地元の歴史や環境をまとめた冊子の作成と配布など幅広い活動を行ってきた。震災後は、東北EM普及協会や環境U-ネットやまがたをはじめ、多くの支援により、浸水した家屋などへのEM散布が広く行われ、悪臭の軽減など効果が高く、EMの講習会などを行ってきた。この災害で文明の弱さと人間の強さを再認識し、災い転じて福となす歴史の転換点に生きていることを実感する。自分のために使っていることが、実は他の人のためになるEMは、まさしく善循環の社会を実現している。復興支援ボランティアをきっかけとして、社会貢献が人生の意義として広まりつつある若い世代の意識、復興過程で形成されていく人々のつながりと新しい取り組みは、今後の大きな希望である。日和見菌を味方につける善玉菌たちのように、我々もまた、かくありたい。

水田塩害を克服した自然農法

千葉万里子(石巻市・兼業農家)

EMに対して絶対の信頼をおく千葉さん
作付面積は84aの兼業農家で、EMは震災の年から使用した。津波により塩水が田に入ったため、これを機に除塩と土壌の改善を同時に行いたかった。EMは塩分と汚泥を分解して養分に変えることができると同時に塩害に対する作物の耐性を高めることができると知ったので、EM投入後は安心して作付けすることができた。

無農薬・無化学肥料での栽培を行ったが、EMを使用した水田ではカメムシの発生が見られなかった。収穫量はEMを投入しなかった水田とほとんど変わらなかったが、目に見えない質の違いは実感できた。放射能汚染についても公的機関で検査し問題はなかった。

翌年には、すべての水田へEMを投入した。EMはコスト削減のため培養器で約50倍に培養し、さらに1tタンクで約20倍に2次培養して使用した。明らかに泥がトロトロになり、長靴の入り方が違った。塩害は全く現れなかった。カメムシの被害はなかったが、イネミズゾウムシが発生したため、EM散布時にトウガラシ液を添加した。雑草にも苦労したが、環境が復活していることを実感した。3年目も、塩害の影響はなく順調に生育して収穫を迎えることができた。これからの目標は、10aあたり810kgの収量としたい。最終的には、1200kgが大きな夢である。同時においしい米を目標とし、さらには自然農法が普及して米の付加価値が見直され、生計の立てられる農家が増えることを期待している。

比嘉教授講評
従来は12〜13俵(10a当り)が限界といわれる中で、素人でも、13.5俵(10a当り)を収穫できたという素晴らしい事例。EMを徹底して使えば目標20俵も夢ではない。雑草対策は代掻きを収穫から田植えまでに何回できるかが勝負でEMの仲間を田んぼに増やす。EMセラミックパウダー0.1〜1%を添加したEM団子を1坪当りに1個、3cm下に埋める。5cmほどのトロトロ層ができるとよい。米はおいしくなると同時に生態系もよくなる。イネミズゾウムシがでるのは、腐敗物質が多いので、その点を改善するとよい。


事例3 十三浜ワカメ復活に活躍したEM団子
仲村由美子(歯科医・千葉県我孫子市)

EMでつながった仲村さんと佐藤さん
震災後、すぐに息子の友人と共に福島の子ども施設に物資を届け、その後、本業である歯科診療を100%自己責任で行うと決めて、歯科医師、衛生士、技工士の仲村歯科チームで気仙沼と石巻に通った。入れ歯の調整のために再度北上町を訪れた時に漁業協同組合の佐藤清吾さんの話を伺った。津波の被害や、十三浜の現状などの説明を聞いて、佐藤さんが海と十三浜を心から愛している姿に感動して、以後、石巻十三浜地区の復興支援を続ける。

復興への応援を込めた支援を十三浜に届ける方法として、1口5,000円のわかめサポーターを募集。

わかめ復活サポーターのチラシ
集まった資金でわかめ養殖の準備をし、翌年養殖に成功したらわかめを届けるという内容で、全国からたくさんの支援を受けることができた。しかし、心配は放射能汚染のことで、もしわかめに放射能が検出されたら善意を無駄にすると夜も眠れなかった。しかし、自分が日常的につかっているEMが放射能除染の助けになると聞き、EM研究所に問い合わせをしたところ、EMのボランティアの方々が支援してくださることになり、わかめが収穫できることを確信した。

わかめは順調に育ち、例年にない高品質で価格は2倍以上で取引された。収穫時、浜を訪れた際、釜の湯気の向こうに見えた浜の方々の輝く笑顔は今でも心に残っている。心配した放射能も不検出だった。震災という非常時に「EMの神様」から頂いたご縁は、大切な宝だと感じている。これからもことあるごとに十三浜に通い、何かお役に立つことをしていきたい。

宮城県漁業協同組合

北上町十三浜支所運営委員会 佐藤清吾

約1万個のEM団子

例年にない大きさのわかめ
十三浜は宮城県石巻市北上町の沿岸部で追波(おっぱ)湾に面した地域。その名の通り、十三の海浜集落が点在し、先祖伝来の地に仲睦まじく暮らしてきた歴史のある集落だったが、震災はその地域共同体の有様を覆すほどの契機を作った。ためらいもなくこの土地を捨てる開祖の家まで現れ、今回の震災の大きさも、その後の被災者の行動もまったく想定外のレベルだと感じる。震災前のわかめ養殖業者数は約100人。養殖筏は3,500本だったが、震災後は約3,000本に減少した。

被災から3か月後に十三浜の漁業の復興に全霊で打ち込んでくれた仲村医師夫妻が、わかめ復活支援金を集めてくれたのがきっかけで、EMに出会った。私個人としては、漁場のガレキ処理から新たな養殖筏の敷設で、さまざまな問題があり、EMの功能を完全に理解するまでではなかったが、仲村さん夫妻が推奨するものであるならば、やる価値はあるということになり、実行することを決めた。漁場の造成に出ている男に代わり、婦人部によるEM団子つくりを開始。種不足と筏の資材不足から、震災前の7割のわかめの種の鋏み込み作業が終了したのは大晦日だった。震災の年に一円の収入もなく、翌年も無収入になることは絶対に避けたかったが、これほどまでに種まきが遅れるとわかめは無収入になるだろうと覚悟していた。

ところが、漁場に3回にわたりEM団子とEM活性液を投入した結果、春からの刈り取りまでにわかめは急激に成長し、通常は2mのところ、3mまで伸びるという今までにない豊作となった。私たち漁民は、EMについてはまったく経験がなく、比較する過去のデータを持ち合わせていない。しかし、あの未曾有の災害時に「溺れるものは藁でもつかむ」の心情のところに手を差し伸べてくれた関係者に心よりお礼を申し上げたい。確かに私たちの経験と想像を超えた成果があったこと、また、EMを使った年は7割の種付けながら在庫が払低した関係から、相場が例年の2倍を超える価格で取引され、被災漁民の生計再建に大きな力を与えられたことに感謝したい。

比嘉教授講評
釜石市で、10年前EMを流すことでわかめが巨大化する経験がある。海の浄化活動でいえば、瀬戸内海、有明海、三河湾 伊勢湾さらには、東京湾の実績がある。ことに東京湾には、9年間にわたり毎週4tのEM活性液が流されており、東京湾の海底は巨大なサンゴ が生息して海のジャングルとなっている。EMは、光合成に偉力を発揮して、海をきれいにし、海産物のできもよいことは経験済み。継続してEMを活用してほしい。


報告1 ロシアから見る震災EMボランティアとロシアEM活動
イワン・ユーゴフ(ロシア沿岸州EMセンター)

すぐに被災地に入ったイワン氏
福井県の和田守道男さんを通してEMに出会った。和田守さんは、日本への材木輸出のためにシベリアの森林が破壊されていることで、永久凍土が溶け、メタンガスが大気に放出されていることに関心を寄せ、EMでシベリアの問題解決をしたいと熱望されていた。これをきっかけにEMの勉強はじめ、現在はロシア沿岸州EMセンターの通訳として勤務している。震災時には、EMボランティアとして現地で活動し、日本人の忍耐力と助け合う心に感銘を受けた。ロシア極東地方でも昨年、壊滅的な洪水被害にあったが、日本でのボランティア経験をアムール州政府に詳しく説明し、無償でEM原液を送ることができた。


ロシア極東地方の壊滅的な洪水被害
このセンターでは、EM研究機構の指導でEMを製造し、畜産用EM、EMボカシ、EM5号などのEM関連商品を製造している。ロシア人の多くは、ダーチャと呼ばれる家庭菜園でEMを活用している。2年前には沿海州政府が経営する農業教育相談センターとの合意で、EM基礎技術を特別科目として加え、試験に合格した農家には証明書を授与している。また、沿海州農業アカデミーとの共同で畜産のEM応用研究を行い、豚の死亡率が70%減少、体重増加率は5%から12%に増加した。さらに豚舎の衛生状態は改善し、悪臭もほとんどしない。さらに豚舎の敷物にEMを混ぜた有機物を厚さ約1m敷くことで、糞は分解され、その時の発酵熱で暖房はほとんど必要なくなり、しかも健康に育つという効果もある。モスクワ国営生物技術大学との共同で養殖魚の研究では、養殖池にEMを投入することで毒物作用に対して保護的な役割を果たすことが明らかになり、どんな薬剤を使っても死亡率が高いナマコの養殖でも問題を解決して、生育が良好になるという結果がでている。

EMによる石油系汚染物質の分解能力比較実験

環境問題については、ある湾の海底から石油系汚染物質に分解過程におけるEMの影響を調査した結果、EM団子では66%を分解し、EM無しに比べて10倍以上の効果があったことなど、さまざまな研究が行われている。


報告1 岩手、宮城、福島における復興支援活動の全体の動き
㈱EM研究機構災害プロジェクト 西渕泰
岩手県・宮城県での活動


国際ボランティアによるEM散布
津波の被災地での衛生対策のためのEM資材の主な拠点となったのは、岩手県ではU-ネットいわて、岩手コンポストの2ヵ所、宮城県では大崎市の東北EM普及協会、栗原市の平野勝洋氏(SPC JAPAN)、気仙沼市の足利英紀氏(三陸EM研究会)などで、全国からもEMボカシなどの支援が行われ、避難所のトイレの消臭や水産関係の廃棄物の悪臭対策、住宅等の衛生対策などに成果をあげた。

宮城県仙台市 鈴木英俊さん

鈴木さんは20年近く前から健康と美味しさにこだわり、EMを活用してお米や野菜つくりを行ってきた。震災時、海岸から約2.5kmの水田は津波の被害を受け、あたり一面ヘドロ混じりのゴミが散乱。作付けができない絶望的な被害の中、井戸を掘り、EMを使って見事な稲を育てることに成功した。 鈴木有機農園ブログ http://suzuki-yuukinouen.blog.ocn.ne.jp/blog/

宮城県七ヶ浜町 星博さん


笑顔が戻った星夫妻
平成7年から半農半漁で米づくりと海苔づくりにEM技術を活用している。海苔へのEM活用の開始はお米でのEM活用の技術が確立された後、「昔の海苔はうまかった」というお客様の声を聞き、平成12年頃から本当に美味しい海苔をつくるため試行錯誤を開始した。海苔の栽培では2〜3か月の間に5、6回の酸処理を行うが、星のり店では、この酸処理の行程にEM活性液と木酢や竹酢の混合液を使用することで、海苔の健全な育成を促している。

また、米づくりでは苗を強くするためにローラーで苗を倒して根張りをよくする作業を行っていたが、この考え方を海苔にも応用し、海苔の芽が小さいうちからブラッシングを行い、不純物を取り除くと共に細胞を活性化させる方法を開発し、EMの活用とブラッシングの組み合わせにより細胞が密につまった香りと歯ごたえの良い美味しい海苔づくりを実現している。震災による被害で、平成25年度も震災前の2/3の規模までしか回復しておらず、海苔づくりの復興を優先させるために4.5町歩ほど行っていた米づくりも再開できていないが、美味しくて本当に健康に良いお米と海苔を待ち望んでいる人たちのために、着実に復興へ向けての歩みが進められている。

福島県での活動

福島県では、津波被害と同時に原発事故が起きたため、震災直後の組織的なEM活用は南相馬市の一部等に限定されていたが、住宅内外でのEM活用による放射性物質汚染の軽減活動を希望する団体や個人に対してU-ネット災害復興支援プロジェクトを通してEM活性装置やタンクなどの機材が無償貸与され、現在も各団体での活動が継続中。農業分野ではEMオーガアグリシステム協議会の生産者の農産物から放射性物質が安定して不検出(1Bq/kg以下)となることを確認した。

稲作でもEMを活用していた玄米での放射性セシウム濃度が低く、食味などの品質も良いなどの報告が寄せられ、二本松市、福島市松川、南相馬市、田村市都路町などでEMを活用して土づくりに取り組み、品質の良い米づくりに取り組む農家が増えている。また、畜産では牧草の放射性物質低減化などの放射能汚染に対してだけでなく、質の良いEM活性液を多目的に使用することで、EM本来の効果である畜舎の環境改善や生産物の品質の向上など副次的な効果が短期間に現れている。


2014年4月9日


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