善循環の輪・秋田の集いin大館が、8月30日ルネッサンスガーデンプラザ杉の子で開催され、秋田県各地から300人を超える人々が集いました。この会は、EM活動を行う約1,200団体と個人約400名が参加するNPO法人地球環境共生ネットワーク(通称U-ネット)が主催するもので、今回で70回目の開催となります。理事長の比嘉照夫琉球大学名誉教授がEM技術の最新情報について講演し、地元のEMボランティアや農家などが事例を発表。情報交換と交流をするというもので、会員だけではなくEMに関心のある市民に公開されています。

来賓の小畑元大館市長(写真右上)は、「就任時には比嘉先生にご指導を受け、環境に配慮した美しく住みよい環境都市をめざしてきた。使用済みの家電リサイクルや土壌浄化処理などを実施してきたが、さらに豊富な木材や比内地鶏の鶏ふんのペレット化を行い、環境都市として磨きをかけたい」と挨拶しました。

講演で比嘉教授(写真右下)は、8年間にわたる日本橋川浄化プロジェクトの活動により東京湾が生態系豊かな海に変化していること、福島県でのEM災害復興支援プロジェクトでEMを徹底して使うことにより放射能汚染対策が可能になること、マレーシアでAPNAN(アジア太平洋自然農法ネットワーク)25周年の記念会議が開催され、自然農法から衛生対策や建築、水産養殖へと広がっていることを確認したこと、国会に「有用微生物利活用推進議員連盟」(会長・野田毅氏)が発足したことを報告し、さらにEM団子、EMセラミックなどを利用した誰でもできる家庭菜園技術などを紹介しました。「日本一子どもの学力が高い秋田県ですから、すばらしい地域になることは間違いありません。EMも基本に忠実に使うだけではなく、みんなで工夫して創造的に活用していただきたい」と話しました。

続いて、NPO法人足利水土里探偵団理事長の大島由臣さんが、「簡単、安全、楽しいEM利用の環境教育」と題して特別講演を行い、栃木県足利市立葉鹿小学校でのEM環境教育の豊富な経験を基に環境教育の考え方などを話しました。U-ネットでは、EM環境教育をさらに充実するために環境学習アドバイサー登録制度の導入や、EMの活用を体系的に学べる資料の作成、学習会などを企画しています。

事例発表では、大館市、横手市、東成瀬村など6事例が、披露されました。30年近い取り組みから、最近立ち上げた斬新なアイディアのものまで、興味深い事例が続きました。また、午前の部の花のまちづくりセミナーでは、横手市の増田町と十文字町の花のまちづくりについて事例発表があり、なによりも会場に映し出された色鮮やかな花の美しさに参加者は魅入っていました。

なお、今年度は岐阜県瑞浪市など4県で善循環の輪の集いが開催されます。詳しくは、事務局までお問い合わせください。

http://www.unet.or.jp/ 


講演 「簡単、安全、楽しいEM利用の環境教育」
NPO法人足利水土里探偵団理事長 大島由臣
子どもたちにとっての環境問題

地球温暖化の影響でゲリラ豪雨など深刻な環境問題があるが、深刻であってもなくても子どもにとっては"現在"が"環境"そのもので、この現実の中で大人は子どもに何を伝えていくか考えなくてはならない。今までの環境教育は、動植物との触れ合いを通して人間と環境を見つめる観察型と省エネを行うことで地球を守るISO型の2つだったが、これからは自分のライフスタイルの変革を示唆する教育を行うことが求められる。そのためには、なによりも体験が重要で、①親しむ、②知る、知らせる、③アクションを起こすという3段階のステップを踏ませる必要がある。

体験して学ぶコツ

学びの4か条は、①聞いたことは忘れる、②見たことは思い出す、③体験したことは理解する、④発見したことは身につく。体験を通して学ぶコツは、コミニュケーションを大切にして、けっして押し付けないこと。共に学ぶ、共に楽しむことを最優先にする。

例えば、プールに入れるEM米のとぎ汁活性液が入ったボトルのガス抜きを毎日やることは、小さなことだが継続して体験できるという意味で教育にとっては大変価値のある作業となる。プールにEMを入れることで、清掃時間が4年間で3分の1になり、授業時間をつぶす必要がなくなることや、シーズン中の水の入れ替えが必要なくなること、スイミングスクールの先生が驚くほどの水質の良さになることを実感し、さらにビオトープ化したプールでの豊かな生態系を観察するなどができるなど、プール掃除が教育の現場になり、その結果のすばらしさ、楽しさは経験した子どもたち全員で共有できる。

教育的効果

比嘉教授は、教育の原点として、①潜在能力、②自己管理能力、③人間関係能力、④自力解決能力、⑤使命感と責任感と正義感を向上させて、学びが好きな子どもを育てる仕組みをつくっていくことだと言われているが、16年間の学校でのEM活動で培われる子どもたちの力は、まさに生きる力だと確信している。

事例発表
横手市 十文字EM研究会 熊谷博子

焼却炉から発生するダイオキシン問題が起こったことから、平成5年十文字町消費者の会で生ごみボカシ和えを始めた。その活動は、花いっぱい運動を行っていた町の婦人会組織8団体にも拡がり、EM生ごみたい肥で育てる花づくりも始まった。平成12年に県のモデル事業として行政と住民が共同で取り組む生ごみ循環利用システムづくりが始まり、農家、農協、商工会、婦人連絡協議会行政担当者など18団体、グループ、関係機関などの代表で構成された「十文字資源循環推進協議会」が発足した。モデル事業では、たい肥化試験やたい肥分析なども行い、農家や消費者の連携する地消地産のしくみまで作り上げ、「資源循環型地域」のさきがけとなった。横手市との合併後も、生ごみリサイクルを中心に花壇作り、学校のプール掃除など様々な形でEMが取り入れられている。後継者も育ち、EMでの地域づくりが続いている。


東成瀬村 秋田栗駒リゾート㈱ 谷藤広子

東成瀬村は秋田県の南東端に位置する村。平成12年、ごみ焼却施設で燃えるごみに混ざる「生ごみ」の汚さに驚き、村内の2つの婦人会が合同でEMボカシを使った生ごみのたい肥化をスタート。「ごみの資源化を考える会」(現在「なるせEM研究会」)を設立する。第三セクターである秋田栗駒リゾート鰍ェ生ごみたい肥化事業を受託し、現在は約800世帯のうちの220世帯、年間約50tのEMボカシあえ生ごみを回収している。

回収した生ごみは真空乾燥機(新型の蘇生利器)で脱水し発酵させ、肥料化。「仙人ペレット」という名前で、10kg630円で販売し好評だ。農事組合法人「なるせ加工研究会」では、「仙人ペレット」で栽培した「桃太郎」を加工してトマトピューレを開発し、毎年高い評価を得て、第129回秋田県種苗交換会農林水産大臣賞を受賞した。肥料のよしあしを決めるEMボカシの製造は、「なるせEM研究会」が担当。宮城県気仙沼市の足利英紀さんの指導で、品質が安定したEMボカシやEM活性液作りを行っている。今後は、さらなる生ごみの資源化はもちろんのこと、水源の上流にある村の責務として、環境に負荷をかけない地域資源循環をめざしていく。

http://www.ja-town.com/shop/c/c1B16_dD/


大館市 長木小学校 望月まゆみ

平成20年度より、市の出前講座でEMを活用した取り組みを知り、4年生の環境学習へ導入し、7年目となる。4月に「NPOおおだて」(小松和志理事長)のボランティアを招いて、EM教室を開催し、子どもたちが家庭から持参した米のとぎ汁2LでEM米のとぎ汁発酵液(EM溶液と呼んでいる)をつくる。5月にプールへ投入し、6月にプール掃除。少ない水できれいになり、水泳の授業も快適に行われている。夏には目標800個のEM団子をつくり、ドーム球場「樹海ドーム」の人工池で水質浄化に一役買っている。今年は、秋田杉カヌー愛好団体のカヌーシーダ秋田のご好意で子どもがカヌーに乗ってEM団子を投入した。9月には、EM溶液をつくり10月にプールへ入れる。この1年間の活動を子どもたちは大変楽しみにしており、家族や地域との交流も深まっている。今後も、楽しみながら継続していきたい。


大館市 サンフラワープロジェクト実行委員会 日影賢悟

大館市釈迦内小学校の旧名である向陽(こうよう:ひまわりのようにたくましく成長して欲しいと命名された)小学校にちなんだ"ひまわり"を栽培して、種を取り、搾油・瓶詰めをして製品化。『釈迦内向陽油(ひまわりあぶら)』と名付けて販売し、収益の一部を子どもの宿泊研修費用にあて、1泊2日だった宿泊研修が、4泊5日の体験研修に変わった。

事業のコンセプトは、「ALL FOR CHILDREN~すべては未来を担う子どもたちのために~」で、釈迦内小学校、第2中学校、向陽幼稚園、婦人会や、町内会長会議、公民館などのメンバー、さらには企業や大学が参加して、学校教育とまちづくりを"ひまわり"を中心に一丸となってすすめている。街中が"ひまわり"に埋まる夏には、観光客が引きもきらず、またひまわり油に続いてひまわり茶やケーキなど商品が誕生し、地域経済の効果も期待されている。


大仙市 秋田EM活用研究所 伊藤和廣

農事組合法人エコフレンドリー秋田で、14の拠点農家で約300名の農家にEM栽培の指導を行っている。農家の圃場を合わせると面積は50ha。活性液投入量は年間33tを超える。育苗段階からEM栽培を行い、10a当たり、9俵以上の好成績をあげている。EM栽培のメリットは、低コストで高品質の米がとれることで、しかも省力化が可能。規模拡大しても経営が成り立ち、今後は若手後継者の期待に応えたい。稲作のほかにも、タバコ、トマト、メロンなどに活用し、ことにメロンは、糖度が上がるだけではなく、収穫時期が早まり、経営的にも安定してきた。EMたい肥とボカシを組み合わせることで土壌の団粒化をはかる技術の普及で、本物にこだわる品質の良い農産物の生産に努めていきたい。

http://emx.emx.shop-pro.jp/?cid=29341


鹿角市 花輪ふくし会 安保純子

障がい者の自立支援のために飼っている比内地鶏にEMを活用。生産羽数は、平飼いで1万2000羽。秋田県内の1戸当たり平均は4500羽で、規模としては約3倍だが、鶏舎内のニオイもなく、すぐ横に住宅があるが苦情が出たことはない。また、病死する鶏もなく、健康状態も問題ない。生産された比内地鶏は、施設内で加工され、首都圏の料理店を中心に出荷されている。今年、オープンした花輪ふくし会のアンテナショップ「くらみせ」では、この比内地鶏を使って親子丼を提供して大変好評だ。また、EM石けん製造の量産体制が整い、秋田北生協での販売が始まっている。「子どもたちの肌がきれいになった」など、うれしい声が届いている。

http://a-hanawafukushikai.jp/


花のまちづくり事例発表
横手市増田町 鶴飼美和子

平成19年に開催された秋田国体をきっかけにバレーボール会場近くの整備されていない緑地帯に「国体ウェルカム花壇を作ってはどうか」という婦人会からの提案で花壇づくりを行い、現在まで継続している。地域住民の花でのまちづくりに興味を持ってもらえるよう、花の色や配色にこだわっている。その結果、平成20年度の秋田県花壇コンクール県教育長賞受賞を皮切りに毎年様々なコンクールで受賞し、昨年度は3回目になる第23回全国花のまちづくりコンクールで入選を果たした。花壇づくりの成果は、婦人会として地域貢献を果たす自信となり、女性たちの活躍の場を広げている。


横手市十文字町 佐々木 仁

教員を退職後、大学で学んだ造園学を生かして、地域の緑化プランや花壇づくりに関わる。近年、十文字でも空き家や休耕地が増え、町の活気が失われている。この街に住みたいという人を少しでも増やすためにも、街に花や緑を増やすことが大事ではないか。そのために街の中心部を通っている旧国道沿い400mの「フラワーロード」、「道の駅十文字」の200mの花壇のデザイン、植え付けや手入れ、JR十文字駅や老人ホーム等のプランターの土づくりや花植えなどを、農家や住民の協力で行っている。また、鳥海山を望む県道沿いの両側2kmのおかめ桜の並木をつくることに力を注いでいる。花づくりを通して、郷土愛を次世代に受け渡したい。


2014年9月9日


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