有機農産物普及・堆肥化推進協会(会田節子事務局長)が主催する生ごみリサイクル交流会「生ごみは宝だ!堆肥化継続のために」が、3月15日から1泊2日の日程で富士河口湖町・足和田ホテルで開催され、関東圏から55人が参加した。

初日は、同堆肥化協会の瀬戸昌之名誉会長をはじめ、地元富士河口湖町で堆肥化を進める「ポトリの会」や14年間にわたり地域の生ごみ回収・堆肥化事業に取り組む「NPO緑の会」(茨城県取手市)、行政と市民の協働が成果を上げている東京都日野市の「ひの・まちの生ごみを考える会」などが事例発表を行い、生ごみを堆肥化することの意義を確認し合った。


官民協働の取り組みを発表する日野市・佐藤美千代さん
持続可能な未来社会のために

瀬戸さんは「なぜ、生ごみ堆肥化なのか・・・」「継続のために必要なことは何か」と題して発表。まず、生ごみを「燃やして、埋める」ことと、「堆肥化」など資源化することと、どちらが合理的か・・・と問題提起。生ごみを堆肥化して土づくりをした場合「回収や労力など一見高い経費をかけているようだが、コストパフォーマンスでいえば土の団粒形成が雨による土壌流亡を防ぎ、多額の費用を掛けて地下ダムを造るより洪水防止になる。燃やさないので環境負荷も軽減できる。美味しくて栄養価の高い作物を提供できるので健康になり、医療費を削減できる」と説き、「持続可能な未来社会のために、良いことは良しとして認める“公正”な社会ルールが問われている」と訴えた。

続いて行われた3事例にEM活用が報告されたが、ダンボールコンポストを使用した堆肥づくりなど選択肢も増えていて堆肥化に間口の広がりがうかがえた。

この後開かれた夕食と懇親会は、富士ヶ嶺バイオセンター顧問の遠藤 稔さん(EMエコインストラクター)による巧妙な司会で終始笑い声が絶えず、「志が同じ集まりで、同窓会のようです」(NPO緑の会・恒川敏江さん)と盛り上がった。
 ダンボールコンポストについてはこちら
http://www.nakano-compost.org/danborucompost.html


「同窓会のよう・・」
胸襟開いて、本音で語り合う合宿型交流会
理想のバイオリサイクルシステム

2日目はポトリの会のボカシづくり工房をはじめ同町・富士ヶ嶺バイオセンター(株式会社ゼロ)、身延町・境南衛生組合堆肥化施設を視察した。

同バイオセンターは潟[ロ(本田辰三社長)が平成14年度に総事業費約10億円でスタートした家畜排泄物処理システム。糞尿からでる「メタンガス」を利用発電するすることで施設内電力をまかなうことと、良質なきゅう肥製造を見込んでいる。 現在、チップ加工したせん定枝を地域の畜産農家が牛舎のしき料として使用。糞尿としき料が混じった廃棄物を潟[ロが有料で引き取り堆肥化、EM散布する工程を経て完熟した発酵牛糞堆肥は「富士のみのり」名で販売している。約3万平方メートルに及ぶ敷地に並ぶ施設からニオイはない。本田社長は、「資源の完全循環ができている」と説明した。

境南衛生組合ごみ処理施設に併設する堆肥化施設では、町内の事業系生ごみを週1回収し、EMボカシで堆肥化、ペレット化した発酵肥料「ペレットくん」を製造販売している。回収からペレット化まで正味10日間の製造工程を目の当たりにして、NPO緑の会の恒川芳克さんは「こんな短期間で堆肥化できるとは。EMを使っていればこそで、微生物の力を見せつけられた」と驚きの声を挙げていた。

事例発表

事例1

行政の委託を受けて堆肥化14年 拡大のための課題      NPO緑の会

取手市のモデル事業として1200世帯、年間約122tの生ごみを回収するNPO緑の会(恒川敏江理事長)だが、「事業拡大のネックとなっているのは生ごみ堆肥化(資源化)経費が焼却に比べて割り高と思われている」と述べ、家庭の生ごみを含めた「食品リサイクル法」改革案の早期成立を期待したいと話した。

★ 「特定非営利活動法人NPO緑の会」  http://npo-midorinokai.jp


EMボカシ工房で見学者に説明する渡辺さん(中央)
右隣・渡辺治子前会長 左・遠藤さん
事例2

生ごみパワーに魅せられて
おいしい野菜に満足

ポトリの会
渡辺朝恵会長

EMボカシ工房の維持費、ボカシづくりの材料は町が提供。渡辺さんは「町の支援で成り立っている。めざすところはゴミゼロ。余ったら福祉へ廻そう。健康になると医療費削減で町は喜ぶ」と紹介。

事例3

生ごみを減らそう・活かそう大作戦 行政、市民の協働
ひの・まちの生ごみを考える会 佐藤美千代代表

2004年に市民の提案をもとに行政と協働でスタートした「一般家庭生ごみ回収・堆肥化事業」は、現在約200世帯の生ごみ約30t/年に落ち葉など約20t/年を燃やさずリサイクル。コミュニティガーデン「せせらぎ農園」(約650坪)では、生ごみを直接投入する「土ごと発酵方式」で土づくりをして野菜や花を植えている。また、「ダンボールコンポスト」が推進されているので、集合住宅の住民も手軽に生ごみ堆肥化に参加。収穫物は「援農」に対する「労働の対価」として分配されるので、誰でも好きなときに参加できる”地域の憩いの場”になっている。行政担当者と参加した佐藤さんは、「行政と市民の協働体制がうまくかみ合っていている」と語り、行政担当者は、「活動がどれだけ市民に還元されているかどうかをアピールすることが市民の信頼を得るコツ」と明かす。

★ 「まちの生ごみ活かし隊」  http://www.ikasitai.info/

【関連記事】 都市を生ごみで耕す 日野市「まちの生ごみ活かし隊」 せせらぎ農園
http://www.ecopure.info/special/yuuki/yasai/hino.html

記者後記
同協会は2013年にNPO法人を解散するまで20年間早稲田大学国際会議場などを会場に全国各地から400人前後が参加する規模の大きい交流会を開催してきた。空白のこの2年間は事務局長の会田節子さんにとって健康を整える時間になった。今回装いも新たに関東圏からの参加者による合宿型交流会としてコンパクトに再スタートしたが、「50人くらいの規模で年1回の開催をめざしたい」と意欲を見せる会田さん。確かに、現場で生の声を見聞きし、その地域の事情、現状を把握する現地視察・合宿型交流会は参加者にとって得るものが大きいと言える。しかも、問題点を共有しながら、多くの出会いも得る。「これまでに播いたタネがどれくらい育っているかを見届け、新たな活動を発掘していきたい」と語った会田さん。キャッチフレーズ“生ごみは宝だ!”が再び輝く。(鹿島)

2015年4月13日


トップページ | EMとは? | 特集・レポート | 連載 | 投稿ひろば | 用語集 | FAQ | バックナンバー | EM情報室 | リンク集 | サイトマップ