放射線量は低くなったものの不安は消えない浜通り

参加者のなかには議員や行政職員も
「善循環の輪 福島浜通りの集い in いわき」(主催:NPO法人地球環境・共生ネットワーク 以下U−ネット)が 4月29日、いわき市総合保健福祉センターで開催されました。大型連休にもかかわらず、いわき市内外から約200人が参加しました。震災後、いわき市でのEM講演会は3回目となりますが、「誰もが家族の健康を心配しているが、そのことを口にすることがはばかれる雰囲気になってきた。もう1度、EMが役立つのかどうかあらためて勉強したい」というある参加者は、事例発表、比嘉照夫教授や田中佳医師の話に熱心に耳を傾けていました。

いわき市は、福島県浜通り南部にあり、人口では仙台市に次いで東北地方で第2位。原発から40kmに位置し、震災後は、比較的放射線量が低かったため、市外から約3万人もの避難者が来たと言われ、被災者の仮設住宅も市内に3000棟程度建設されています。沿岸部を除き、見た目には大きな痛手はないようですが、市民の日常は大なり小なりの変化が生じているのは十分想像できます。

そのいわき市では、2011年9月に「EM技術による究極の放射能汚染対策と東日本大震災復興への道すじ」と題した講演会が開催され、大きな反響を呼びました。震災前からEM活動を行っていた地元の内郷商工会女性部(鈴木礼子部長)は、内郷一中校庭に、同校の生徒がつくったEM活性液を散布するなど土壌の除染を行いましたが、現在は国の除染方針により中断されています。


東電と粘り強い交渉に当った柴田さん

まくだけでいいから簡単と若いお母さん
震災後、3回目となる今回の講演会の事例発表は、栃木県那須塩原市の柴田和明さんと地元いわき市の「EMとじょうろの会」の久呉ますみさんが行いました。柴田さんは、福島第一原子力発電所から約100km圏内で農家を営み、EMを活用して無農薬・無化学肥料、除草剤不使用で主にトマトを栽培しています。震災前から、米ヌカや油粕などをEMで発酵させ、半年以上熟成させたものを使用し、ハウス内の土壌に有機物とEMを散布して発酵型の土づくりを行っていました。震災後は、農地に大量にEMを使用すると共に、自宅と近隣の住宅地の放射線量を減らす取り組みを2年近く継続しています。2012年4月には、大量に活性液をつくるため百倍利器と1トンタンク2台を設置し、月間3,300リットルを製造し、散布した結果、農作物の放射性セシウム濃度は、いずれも検出限界以下となっています。また、EMによる生ごみリサイクルやボカシづくり、化学物質フリーの暮らしの提案を近隣の母親たちに広め、今までよりも地域との結びつきが強まっているようです。

柴田さんは、「空間線量は、0.3〜1.0μSv/h程度であるが、EMを熱心に散布している住宅では3〜5割の低減を達成しているところもあり、春頃から子どもたちが風邪をひかなくなった、花粉症もでなくなったなどの報告もあります。因果関係はよくわからないものの、使った人たちが喜んでいるのはうれしい」と報告しました。

また、除染費用に関して、原子力損害賠償紛争解決センターに申し立てたところ、「EMを用いた除染は、その科学的客観的効果が明確ではないが、いまだに一般人が除染方法に関する明細な情報を知り得る状況にない中で、申立人が、放射線リスクを低減させるために効果があると判断し実施したものであることから、本件事故と相当因果のある損害と認める」とのことで、東京電力と和解が成立し、EMを活用した除染費用(30,150円)が支払われることになりました。東京電力は、「風評被害や出荷停止などの損害は認めるが、除染に関しての費用は支払わない」という見解でしたので、この和解は画期的なものと話題になっています。粘り強い交渉でことに当たった柴田さんは、「お金の問題ではなく、東京電力がEMを用いた除染を認めてくれて大満足。さらにやる気が出てきました」と笑顔で語りました。


EM生活を続ける久呉さん

1週間ごとにまくEM活性液
いわき市の「EMとじょうろの会」の久呉さんは、「震災当時、ひどい余震と水、ガソリン、食べ物が不足する生活で、福島第1原子力発電所が爆発している様子を見てもピンとこなかった」と当時を振り返り、だんだんと深刻さがわかり、なんとかしなくてはと思い悩んでいたところにEMの情報をもらい、「これだ」というインスピレーションで50人の仲間たちとEM活性液を土にまき始めました。当初は、半信半疑だったそうですが、1年半以上が経過し、EMを散布しているところとしていないところの差がしっかり出ていることを確認。再び、やる気を出して、500トンタンクを2基設置し、毎週1軒あたり60〜80リットル、1uにつき1リットルを目安に真冬も雨の日も撒いたということです。まき方でもその結果が違うこと、炭との相性がいいことなどが経験的に分かり、EMへの信頼が深くなったということです。「子育てするように気長にやっていくのがよいかもしれない」と、主婦ならではの視点でEMとのつきあい方を披露していました。なによりも、震災当時の不安が解消され、前向きに問題解決されている表情が印象的でした。


できることを続けたいと鈴木礼子さん(右)
比嘉教授は、ベラルーシでのEMを使った実験の結果や、福島県での放射能汚染土壌での実験などで、生物現象について一定の成果が出たことを報告し、壊れていくエネルギーを強化する働きのあるEM(有用微生物群)の密度をあげることで、人間も土壌も微生物層(マイクロバイオーム)が善玉菌に変わることが可能だと強調しました。目安として土壌には、1u1リットルのEM活性液を使うことを提案しました。現存の科学よりも、先を行くためになかなか理解されないが、気がついた人から人類の共有財産であるEM(有用微生物群)を増やし、生活化して使うことを再度呼びかけました。

エネルギッシュにEM活動を引っ張ってきた鈴木礼子内郷商工会女性部長は、「放射能については、先が見えないので苦しいけれど、原点に戻り、よいことは何でもやってみようと思った人も多いのではないか。勇気と励ましを頂いた」と感謝の言葉を述べていました。

NPO法人地球環境・共生ネットワーク(U−ネット)が設置するEM拠点は、福島県に25箇所、栃木県に2箇所。U−ネット事務局では、「地域住民の方に大いに利用していただきたい」と話しています。

田中佳医師の講演要旨

リスクのある時代を生き抜く


「続・健康自立力」を出版した田中医師
人間の身体を蝕む原因は、①食生活の乱れ、②強いストレス、③悪い環境と生活習慣。お腹を満たすだけではなく、本当に力となる食事を摂ることが大事で、お手軽、便利、化学物質まみれの食事は避けなくてはないならない。人間の体の100兆個と言われる体内細胞は、1個あたり100万回の異なった化学反応を連続して行っている。これを仲立ちするのが、「触媒」と呼ばれる酵素。消化と代謝の働きをする酵素は、1日の生産量が決まっており、年齢を重ねるごとに少しずつ減っていくので、酵素を消耗させる食生活は厳禁。たとえば、インスタントやレトルト食品、白砂糖の入った食品、高たんぱく、トランス脂肪酸などの悪い油。残留農薬の野菜などを大量に摂ると必要な消化酵素を総動員させるため、酵素の備蓄が減り、代謝や解毒に回る酵素の不足が生じ、病気を引きおこす原因となる。栄養補給には、炭水化物、たんぱく質、脂質の3大栄養素とアミノ酸、ビタミン、ミネラルを摂ること。納豆、ヨーグルト、漬物、味噌などの発酵食品、オリゴ糖、野菜の繊維質などは、栄養吸収細胞をかかえる腸内細菌を整え、消化吸収を進めていく。睡眠を十分にとり、楽しくできることを精一杯して暮らしていくことが、リスクのある時代、なによりも大切だ。


2013年5月31日

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