EM PEOPLE

今こそ、土からはじめる食育を~
「さかえ水土里の会」会長 城戸マツヨさん

「さかえ水土里の会」会長 城戸マツヨさん
今こそ、土からはじめる食育を NPO法人関東EM普及協会の理事で、20余年EMの普及に携わる城戸マツヨさん。「さかえ水土里の会」を発足して、今再び生ごみリサイクルの会をスタートさせる理由と、活動への思いを伺いました。

――生ごみリサイクルを始めたきっかけは?

城戸:1990年代、ごみ問題が大きな環境問題として浮上した時、生活協同組合の組合員をしていました。その時、我孫子市の消費生活展の実行委員会に参加し、生ごみの担当になったことをきっかけに「どうやったら生ごみを燃やさないでリサイクルできるか」を調査したのです。そのとき、EMボカシを用いて肥料が簡単にできることを知りました。市民の関心も高くエコピュア我孫子の結成に加わりました。無料でEMボカシを定期的に配布し、自分の家庭で土に還してもらう方法で、会員1,200人までになりました。当時の我孫子市市長が退任するまで、市のEMボカシの無料配布は続けられました。

品質の良いEMボカシの供給のため、販売している福祉作業所のボカシづくり支援中のメンバー
品質の良いEMボカシの供給のため、販売している福祉作業所のボカシづくり支援中のメンバー
――農家と連携する循環のしくみはどうやって?

城戸:毎日出る生ごみですが、農家では作付け時期に使用が集中します。『保存に耐えるようにする』『機械で効率的に撒けるよう使い勝手をよくする』『肥料効果が偏らない』など、本当に生ごみが農業で使えるかを試すため、環境省の環境基金を使ってトラックで移動できるEM用の乾燥粉砕機を導入し、会と2軒の農家で総150戸のマンションの生ごみを毎週回収しました。その結果、機械で粉砕乾燥したものを農業用のEMボカシにして、農家のための有機肥料として充分使えることがわかりました。 一方、会員であった有機農家の玉根康徳さん(我孫子市・伝習農場むそう塾代表)は、従来からおこなっていた50軒の消費者との産消提携に、EMぼかしであえた生ごみ(以下、EM生ごみ)の回収を取り入れました。回収したEM生ごみを熟成後チョッパーで粉砕し、ハウスに薄く広げて乾燥する方法をあみ出され、生ごみがおいしい野菜になって循環する姿をみごとに見える化し、全国に発信することができました。

発酵に適した夏季に大量のボカシを仕込み中
発酵に適した夏季に大量のボカシを仕込み中
――今、再び生ごみリサイクルの会をスタートする理由は?

城戸:我孫子市から栄町に引越し、それから20年余NPO法人関東EM普及協会の事務局としてEM活用の普及に関わりました。経費節減が大きな課題になっている町では、負担金が大きいごみ処理経費軽減の施策をすすめています。家庭系可燃ごみの約半分を占める生ごみの減量効果は小さくありません。現在、モニター80世帯にEMバケツとボカシを配り、減量化を普及しています。細々と続けていた会を3年前「さかえ水土里(みどり)の会」として再結成し、普及指導を受け持っています。紆余曲折がありましたが、庭のないモニターには町有地を用意し、会が管理を行うことになりました。持続可能な町づくりをかかげる行政にとって、生ごみ減量にとどまらず、生ごみを活用してはじめて説得力があることを理解していただきました。生ごみ活用実践地では、健康な土づくりが肝心であり、基本技術である質の良いEM活性液やEMボカシづくりも伝えたいと思っています。

EM生ごみ入り菜園のある日の収穫
EM生ごみ入り菜園のある日の収穫

――生ごみリサイクルを通して若い世代に伝えたいこと

城戸:土と環境の問題を研究している陽捷行(みなみ かつゆき)北里名誉教授は、「18cmの奇跡」という著書で、18cmの土壌に全世界の人が生かされていて、1CMの土壌ができるのに100~1000年もかかると書いていらっしゃいます。今、世界の表土の流出は激しく、全世界の人々の食料が賄えない危機的状況にあります。日本の場合は、水田があるために表土の流出が少ないので深刻さがあまり感じられませんが。各地で起こっている崩落事故は土の貧弱さを物語っています。また、土の腐植が、CO2を固定しているのに、その土壌を無視しているためにオゾン層の破壊がすすんでいくのだとおっしゃっています。生態系の維持のためには、土壌が大事なのです。
実際、農家から気象変動が大きくこれまでの農業技術の経験が通用しなくなってきたとか、EMを使っている効果を顕著に感じるようになったとの声を耳にするようになりました。生態系の底辺を支えている微生物叢を豊かにすることは一人でもかかわることができますし、人として基本という気がします。生ごみを土に還して、栄養たっぷりの野菜を育てる長崎県の「大地といのちの会」の吉田俊道さんの活動は、実に理にかなったもので、食育の原点だと思います。今までの経験を生かし、孫世代に豊かな土壌をバトンタッチするための生ごみリサイクルをやっていきたい。生ごみを使った自然の循環が、土から離れて暮らす若いママや子どもたちの腑にストンと落ちるような活動を進めたいと思います。

EM生ごみで育てた元気で花色がくっきりとした西洋サクラソウ
EM生ごみで育てた元気で花色がくっきりとした西洋サクラソウ

文責:小野田