新・夢に生きる | 比嘉照夫

第213回 コスタリカにおけるEMの普及状況 part.2 大規模肥育農場が選んだ“循環”──ガナデリア・コロノ・レアル社の現場から

前回に引き続き、中南米でのEM普及の拠点、EARTH大学のあるコスタリカのEM活用事例です。

大規模肥育農場が選んだ“循環”──ガナデリア・コロノ・レアル社の現場から

コスタリカのガナデリア・コロノ・レアル社の肥育場では、2,000〜2,200頭(主にグレー・ブラーマン種)を飼育。
ここでは約6年間(2024年時点)にわたりEM技術を運用し、臭気抑制と糞尿資源の循環利用に取り組んでいます。
悪臭を抑えて飼育環境を清潔に保ちながら、家畜ふん尿を有機肥料として生かす、という、持続可能な畜産にEMを役立てています。

しかし、この農場では、動物の栄養や健康に影響を及ぼす強いアンモニア臭の発生、ハエなどの衛生害虫の増殖、そして糞尿の適切な管理など、畜産現場ならではの課題を複数抱えていました。

 

においを止め、資源に変える、EMによる悪臭対策と堆肥づくり

こうした課題に対し、農場ではEM活性液を悪臭の抑制と有機堆肥の製造に活用しています。飼育場は全体で64の区画に分かれており、毎週月曜と木曜、1区画(約300平方メートル)あたり約18リットルのEM活性液を散布することで、アンモニア臭を抑えています。

EM活性液をかけながら混合していく

また、毎日回収される約120トンのふん尿は、コンポスト施設で堆肥化されます。EM活性液を散布しながら2台分のおがくずと混ぜ合わせ、堆肥化プラントで積み上げていきます。この工程でも再びEM活性液を使用し、専用の機械で1日2回切り返しを行います。EM活性液は約40%に希釈して用い、天候にもよりますが、おおよそ30〜35日間で良質な堆肥へと発酵させています。

 

見えてきた成果─臭気の後退、発酵の加速、週400トンの資源化

堆肥化サイクルのプロセス

こうした取り組みにより、飼育場全体で悪臭とハエなどの害虫は大幅に減少しました。堆肥の製造プロセスも、従来2〜3か月を要していたものが約5週間へと大幅に短縮され、作業効率が格段に向上しています。さらに、EMを活用した高品質な有機堆肥は有機認証を取得し、週あたり約400トンの安定生産を実現。悪臭対策、作業効率の改善、資源循環という三つの課題を同時に解決する、持続可能な畜産現場へと生まれ変わりました。

 

EMを活用した高品質の有機肥料

 

(出典:「持続可能な循環型畜産システム|EM GROUP JAPAN」)
>導入事例の詳細はこちら(EMROサイト)


ひが・てるお/1941年沖縄県生まれ。EMの開発者。琉球大学名誉教授。国際EM技術センター長。アジア・太平洋自然農業ネットワーク会長、<公財>自然農法国際研究開発センター評議員、<公財>日本花の会評議員、NPO法人地球環境・共生ネットワーク理事長、農水省・国土交通省提唱「全国花のまちづくりコンクール」審査委員長<平成3年~平成28年>。著書に「新・地球を救う大変革」「地球を救う大変革①②③」「甦る未来」<サンマーク出版>、「EM医学革命」「新世紀EM環境革命」<綜合ユニコム>、「微生物の農業利用と環境保全」<農文協>、「愛と微生物のすべて」<ヒカルランド>、「シントロピーの法則」<地球環境共生ネットワーク>など。2019年8月に最新刊「日本の真髄」<文芸アカデミー>を上梓。2022年、春の勲章・褒章において、瑞宝中綬章を受章。

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