有機農業特集

EMを使って土壌改良 トマトの病気が大幅ダウン

静岡県伊豆の国市のトマト農家・阿部聖人さんは、県のニュー・ファーマー養成制度の研修生となり、その後、トマト農家として新規就農し、2015年で8年目。現在は中堅農家として活躍しています。

阿部さんのハウスは20アール。皮がくずれにくく、甘みのある「CF 千果(ちか)」という品種のミニトマトを夏に定植し、10月中ごろから翌年の6月末まで収穫。冬場のミニトマトとして市場では大好評なのですが、3年目から連作による病気が出始めました。一番ひどいときには、冬になる前には青枯病が約200本、年が明けると半身萎凋病が約500本発生。3,750本のミニトマトのうち18%が枯れてしまいました。

急速にしおれてトマトが青々としている状態で枯死する青枯病は、細菌が土壌伝染して起きる病害です。半身萎凋病は、トマトの一方の側の下葉が日中しおれて夜間に戻る状態を繰り返し、最後は木全体がしおれて、成育は極端に遅れ、ついにはトマトの実が着かなくなる病気です。これは、根から侵入した細菌が、導管と呼ばれる茎の中の水分や養分の通るところで増え、水分の流れが遮断されることから起こります。対処法としては、土壌消毒や夏期の太陽熱利用消毒と耐性のある台木を用いるなどしかなく、阿部さんも農薬の一種のクロルピクリンくん蒸剤(通称クロピク)を行ってきましたが、大きな効果は見られずにいました。

そうした時に近所のトマト農家さんから、EMについての話を聞きます。EMの製造会社であるEM研究所の提案は、太陽熱利用の土壌消毒法にEMを使うことと、ハウスの土づくりにEMボカシⅡ型とEMで発酵させたたい肥を使うというものでした。他の方法が見つからないことから、2014年7月、EM活性液の土壌灌注、EMボカシⅡ型などによる土づくりを行いました。

その方法は、
■EM活性液を用いた太陽熱処理
①深さ40~50cm、苗を定植するところを中心に、10%EM活性液500L/10aを動力噴霧器にて灌注。
②透明ビニールシートを全体に張り巡らせて、ハウスの中を湛水状態にし、太陽熱処理を行う。
20日間、太陽熱処理を行った後、水を抜き10日間乾燥させた。

■EM資材を使った土づくり
③EMボカシⅡ型300kg/10aと、有機肥料カエルの堆肥750kg/10aを施用した後、耕起。
④EM活性液20L/10aを25倍に薄めて散布。
⑤定植苗にEM・7  0.125L/10aを5000倍に薄めて葉面散布。(9~10月に有機トマト用肥料を追肥)

その結果、2014 年9月~2015年4月までに発生した青枯病は8本、半身萎凋病は4本と劇的に減りました。
青枯病の発生率は、なんと-96%。また、2014年9月~2015年6月までの収量は、前年と比べて5.8t の増収となりました。

今年もこの方法で取り組むという阿部さんは、「EM活性液を使った太陽熱処理とEMボカシⅡ型などでの土づくりは、労力もかからず、効果もあると感じています。なによりも、私自身が安全に作業できるのがいいですね。トマトの樹勢も良く、味も問題なく、おいしくできました。」と手ごたえ充分。
来期の収穫に期待をかけていました。

現在、青枯病など被害の大きいトマトなどナス科の作物では、食味と青枯病抵抗性の両立が難しく、効果的な対策の開発は難航しています。ことに閉鎖的な環境でのハウス栽培では、土の健康が最大のポイントになり、この問題をクリアしない限り、持続可能なトマト栽培の経営は難しいともいえます。

そんな中で、このEM活性液を用いた病気の抑制法は、ハウスの土壌微生物層を豊かにし、その結果として野菜の健康や病害虫への抵抗性を上げることが可能なようです。対策に悩む農家には朗報といえるでしょう。
安全でおいしいトマトを食べたい消費者にとっても、うれしいニュースです。

 

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