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いま知りたい お米と農家の話 農家と考える米価・流通・田んぼの未来 農文協編

20回続く国際有機農業映画祭が、今年も日比谷で開催された。プログラムのひとつ、農家の話を聞くトークコーナーで、農業ジャーナリストの大野和興(おおのかずおき)さんがこう発言した。「国が大型化、スマート農業を推進する中、限界集落の中山間地で村なくしてコメなしと叫ぶ若い百姓がいるのはなぜか、その声を聞いてみたい」と。

そこに登場した鴫谷幸彦・玉実さん夫妻は、都会から新潟県上越市吉川区川谷地区の村に移住して13年になる。まさにこの本の中に登場する米農家だ。大野さんによれば、彼らこそ今、国から狙い撃ちされている小さな家族経営の農家である。彼らは自然消滅しようとしているわけではない。それに対して鴫谷さんは、「効率の悪い農業はやめろという意味で爆撃されているのかも」としながら、「私たちは別に会社に勤めているわけではなくて、そこで暮らしをしている。その暮らしがあるからこそ、実は農業ができる。農村がなくなれば、農家はいなくなるということが、なかなか一般的 に知らされていないのは悔しい」と話した。

一方、村で34年ぶりの赤ちゃんを出産した玉実さんは、農村の教育力の凄さに驚き、住民が持っている生きていくための知恵や技術は、子どもたちにとっても得難く、「2人の娘たちの成長が楽しみだ」と語った。村が、若い世代を惹きつけるのも、農地をシェアしながら、暮らしの中で自然を守り、人の営みができることなのかもしれない。

 本書は、令和の米騒動を単に「お米が高い」「安い」という話に終わらせるのではなく、お米のこと、田んぼのこと、農家のことを、食べ手がもっと身近に感じ、想像できる世の中になったら――そんな想いで企画されたという。令和の米騒動をきっかけに、米に関心を持つ消費者へ、こうした小さな家族農業を紹介したのは、さすが長年、農の現場に寄り添いながら農民の声を聞いてきた農文協だ。

 米農家の規模、農法、環境は多様であり、その多様性ゆえに私たちの主食である米の生産が成り立っている。経営効率を求め、大型化することやスマート農業だけに舵を切るのはいかがなものか。農業は、「経営」という括りの中だけでは語れないのではないかというひとつ見方の提示となっている。

同書では、「米の過去・現在・未来」「流通の謎」「農家がどんな人たちで、どんなことを考えているか」「農家の経営が成り立つ米価」「田んぼの生きもの」と、米についてひと通りの知識を得ることができる。

顔の見える米農家とつながって、消費者として「私は食べる人」のままでもいいし、自らが米農家になってもいいし、自分が食べるご飯だけは自分でつくる、でもいい。幸か不幸か、耕作放棄地は山ほどある。

輸入農産物を購入することで外国の農地を青々とするよりも、多少高くても国産のお米を買って日本の田んぼを黄金色にしたほうが、いいに決まっている。ご飯の向こう側に見える風景が、なくならないようにという「お米愛」が溢れている。


出版社 ‏ : ‎ 農山漁村文化協会
発売日 ‏ : ‎ 2026/1/17
言語 ‏ : ‎ 日本語
本の長さ ‏ : ‎ 160ページ
ISBN-10 ‏ : ‎ 4540251589
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4540251580

【 目次 】
1章 意外と知らない ご飯の向こう
最近、お米のことが急に気になっている方々へ
ルポ 新潟の米農家 八十八手の米づくり、研いで炊いて仕上げてほしい

2章 資料編 米問題の歴史年表とことば解説・田んぼのイネ図鑑
お米についての歴史年表
お米の歴史 ことば解説
写真 イネを育てる現場より
図解 イネの一生(タネ播き/田植え/分けつ期/幼穂形成期/出穂期/収穫)

3章 データ編 米の価格と流通、米騒動
ご飯1杯の値段 高い? 安い?
データ 米の価格と生産資材価格の推移
米の流通と各段階の米価 ―― 2022年の価格を例に
プレイバック「令和の米騒動」
データ 農家が足りない!

4章 農家がリアルに考えた 米の適正価格
この章を読む前に知っておきたいこと
ケース1 中山間 販売価格は自分の時給から決めた
ケース2 平場 ご飯1杯50~60円は高いだろうか?
ケース3 中山間 農家は価格に根拠を持つといい
ケース4 平場 直販の有機米は販売経費まで農家もち
ケース5 中山間 お米の値段は米だけの値段にあらず
ケース6 平場 子供たち5人を大学にやれたから、適正価格だった
ケース7 平場 急に米価高騰しても、未来への投資ができない
ケース8 平場 再生産可能で、職員の給料を上げていける価格に
ケース9 中山間 農業の未来のためには1俵3万円が適正
まとめ 農家が考えた米の適正価格はいくら?
「令和の米騒動」が起きたとき、農家が思ったこと

5章 農家が農業を続けられるしくみへ
あなたは、どんな農家とつながり、どんな農村風景を守りたいだろうか
農家も消費者も納得できる仕組みに「食料安全保障推進法」が必要だ
この国から農が消えていいのか? トラクタのデモ「令和の百姓一揆」で問うたこと

6章 田んぼは米を生み出すだけじゃない――お米を食べると守られていくもの
田んぼがあるおかげで ――「水田の多面的機能」とは?
レポート 棚田の生きものに会いにいく
写真 田んぼにうごめく無数のいのち

7章 農家とつながる 米つくりをやってみる――小さく始める食料安保
米つくり、自分で小さく始めてみた
農家とつながる方法
リスト 農家や田んぼとつながる方法&場所

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