新・夢に生きる | 比嘉照夫

第208回 チリにおけるEMの普及状況

中南米の国々では、EMの技術が農業を中心に着実に浸透し、各地で成果を上げています。なかでもチリでは、EARTH大学をきっかけとしたEMの普及が長年続けられてきました。前回紹介したペルーと同様に、農業や環境の課題解決に向けた“善循環”の取り組みが現場で定着しつつあります。

畜産への普及がやや遅れていましたが、今回紹介する事例からも善循環的システムを大々的に実行できるまでになっています。

インターネットの時代となり、情報が世界同時に共有されるようになったことで、EMの普及はますます加速しています。

チリでも根づくEMの善循環


チリでのEM普及を担う中核的存在が、Biopunto社です。EM研究機構(EMRO)からの正式契約により、土壌改良や病害予防、畜産分野への応用などを総合的に展開し、チリ国内で着実に成果を積み上げています。

Biopunto社の創業者は、コロンビアのEMパートナーであるFUNDASESの親族を通じてEM技術の可能性に強い関心を持ち、チリでの導入を決断しました。
特に農業分野では、環境への負荷を抑えた持続可能な生産体系の構築を目指し、EMを活用した土壌改良、病害対策、水質改善などに積極的に取り組んでいます。

現在では、その活動は農業分野にとどまらず、畜産分野にも広がりを見せています。Biopunto社はTAG社(Top Animal Care)や獣医系企業と連携し、豚を対象としたプロバイオティクス応用試験を進行中です。EM技術を畜産分野へ展開しようという試みですが、生物製剤を家畜向けに導入するには法的・行政的な手続きが多く、慎重な準備が続いています。

 

EM導入がもたらした驚きの成果──ガーベラ栽培の現場から

チリ・サンティアゴ郊外の「スーペル フロール社」では、EM資材を導入してガーベラの品質と収量に劇的な変化が生まれました。

従来の化学資材中心の管理体系からEMによる微生物利用型の土壌改善へ転換したところ、わずか1年で生産率が45%向上し、株枯れの件数も大幅に減少。さらに、殺菌剤や消毒剤の使用量を75%削減することにも成功しました。
この結果、ガーベラはより鮮やかで大型の品質となり、高値で取引されるようになりました。

(出典:「EMで大輪のガーベラ|EM GROUP JAPAN」)
>導入事例の詳細はこちら(EMROサイト)

 

EMで線虫被害を軽減──トマト栽培における持続可能な取り組み

チリのトマト農場では、線虫や病害による被害と、それに伴う農薬コストの増加が長年の課題となっていました。
そこで、EMを活用した土壌改良と堆肥管理に取り組んだ結果、線虫の被害は大幅に軽減。農薬の使用量も抑えながら、高品質で高収量の栽培を実現することができました。

EMを導入したことから経済的負担も減り、環境への配慮と収益性の両立が可能になったことで、持続可能な農業への大きな一歩となりました。
現場の農家からは「素晴らしい結果に驚いた」との声が寄せられています。

(出典:「トマト栽培におけるセンチュウ対策|EM GROUP JAPAN」)
>導入事例の詳細はこちら(EMROサイト)

 

こうした一連の流れは、単なる技術導入ではなく、土から作物へ、さらに動物や環境へと広がる“善循環”の実践例として注目されています。 チリの農業現場で、EMは着実に“成果の見える技術”として認知されはじめています。農業分野における持続可能性のひとつの鍵として、さらなる展開が期待されています。

同様の課題を抱える方や、海外でのEM導入に関心のある方は、ぜひEM研究機構 海外部までお問い合わせください。
https://emro.co.jp/contact/


ひが・てるお/1941年沖縄県生まれ。EMの開発者。琉球大学名誉教授。国際EM技術センター長。アジア・太平洋自然農業ネットワーク会長、<公財>自然農法国際研究開発センター評議員、<公財>日本花の会評議員、NPO法人地球環境・共生ネットワーク理事長、農水省・国土交通省提唱「全国花のまちづくりコンクール」審査委員長<平成3年~平成28年>。著書に「新・地球を救う大変革」「地球を救う大変革①②③」「甦る未来」<サンマーク出版>、「EM医学革命」「新世紀EM環境革命」<綜合ユニコム>、「微生物の農業利用と環境保全」<農文協>、「愛と微生物のすべて」<ヒカルランド>、「シントロピーの法則」<地球環境共生ネットワーク>など。2019年8月に最新刊「日本の真髄」<文芸アカデミー>を上梓。2022年、春の勲章・褒章において、瑞宝中綬章を受章。