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Part.2 第7回 よく噛んで食べる<具体的食改善その⑥>

今回は、おなかを発酵させるための食べ方として、図の①「よく噛む」について説明します。 生ごみリサイクルの時、土が腐敗しないために生ごみを小さくすることはとっても重要です。昔、ある中学校で魚の内臓や頭をよくつぶさずにそのまま土に埋めて、数日後その土を耕したら、3階の教室の生徒たちが臭いと騒ぎ出したことがありました。それくらい強烈な腐敗臭がしたのです。
ところが、魚の内臓や頭をEMボカシと一緒にビニール袋の中に入れ、袋の上から木づちで叩き潰したものを土によく混ぜると、数日後耕した時に腐敗臭は一切しませんでした。
つぶして表面積を増やし、土によく混ぜたことで魚の遺体がスムーズに次の生命(微生物)の中に取り入れられた(発酵分解した)のです。
つぶすかつぶさないかの違いは、命の循環のルートを大きく変えてしまうわけです。私たちの身体にとっても、よく噛むかどうかはその後の発酵、消化吸収に大きな違いをもたらすことは容易に想像できます。

噛んで促す唾液の効能

さらに、食べ物をよく噛むということは発酵しやすくするだけに止まらず、さまざまな素晴らしい効果をもたらすことが分かっています。 消化吸収に効果があるのは当然でしょうが、集中力向上にも効果が高く、やる気スイッチが入ることも分かってきました。
ある小学校の校長先生が私の話を聞いて、とりあえず1か月間、一口30回噛むことを実行したところ、毎月定期的に歯の掃除に通っていたのですが、歯医者さんから「歯茎がきれいになっているのですが、何かされたのですか?」と聞かれて、噛むだけでおこった変化に校長先生も歯医者さんもびっくりしたそうです。
また、最近の若者特に女性に慢性の便秘が多いのですが、「よく噛んで食べる。夜はおなかを回す」または、「夕食前に間食をしない。夕食はよく噛んで食べる」を実行しただけで、すぐに便秘改善した例はいっぱいあります。なかでも、「コロコロウンチが4日~7日に1回しか出ない。トイレに行くと痛くて泣いてしまう」という小学生の女の子がいて、便秘薬を飲んでも効かなくなっていたそうですが、間食をやめてよく噛んで食べたら、すぐに効果が現われてびっくり!母親から、「体質だとあきらめていました。どうしてもっと早く教えてくれなかったの?」と言われたくらいです。よく噛んで食べる。

飲み物は後で!それだけでスイッチオン”食育”

それくらい重要で、お金もかからない「よく噛む」という行為。ところが、これが一番実行するのが難しい!!だって、「よし!よく噛むぞ!」と思って食べていても、ちょっと他のことに気を取られると知らない間に飲み込んでしまっているのですから。これをどうやって実行させるか?まずは、やはり上のイラストのようによく噛まないと食べられない料理を増やすことでしょう。もうひとつ、どうしても噛んで食べざるを得なくなる素晴らしい方法があります。その答えは、下の写真に表れています。
この写真は、第1話で紹介した香川県三豊市の仁尾小学校の学校給食の風景です。給食はほとんど食べ終わっているのに、牛乳がいっぱい残っています。この小学校の昼食では、児童も先生も全員、「いただきます」のあいさつの後、ほんの少し牛乳を飲んでフタをします。あとはすべて食べ終わってから最後に牛乳を飲むのです。飲み物がなければ、よく噛んでつばを出さないと食べ物を飲み込めません。これをパン給食のときもやっています。だから、児童はみんなよく唾液が出るようになりました。
食べ物を飲み物で流し込まず、よく噛んで唾液を出して食べる。これは昔の日本人は普通に徹底していたことです。実は私も子どもの頃、これをじいちゃんから厳しく叩き込まれました。ごはんが口の中にあるときに味噌汁を入れてもいけないのです。だから、50を過ぎた今でもよくつばが出ます。講演中に水を飲むこともまずありません。今頃になって、厳しかったおじいちゃんに心から感謝です。
私の提案を実行して、食事中は牛乳もお茶もテーブルに置かない保育園もだいぶ増えてきました。どうしても飲みたくなったら、席を立って飲みに行けばいいのです。そこでは、子どもたちの病欠日数がはっきり減っています。小中学校の食育も、こんな、昔だったらあたり前のことから、すぐに実行して欲しいものです。

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