連載

Part.2 第8回 あいうべ体操と空腹<具体的食改善その⑦>

お医者さんが考案した健康になる体操

連載第7回で紹介した「よく噛んで食べる」に関連した取り組みが「あいうべ体操」です。福岡のみらいクリニックの今井一彰院長が、お薬による対症療法的な処置に疑問を抱き、患者さんが継続的に病院に行かなくとも良くなるように根本的に健康になる方法を研究し、考案されたものです。これを毎日実施している小学校ではインフルエンザが激減し、ニュースや新聞でも紹介され、全国的に広がりつつあります。
直接的効果としては、口呼吸が鼻呼吸に変わることでウイルスが入りにくくなり、インフルエンザの発症を抑えたり、ホコリ、花粉、ダニなどのアレルギー源の取り込みが激減します。そして、アトピー、喘息、鼻炎、花粉症、リュウマチなどいろんなアレルギー関係の病気を軽減または予防できるわけです。
でも、それだけではありません。睡眠時無呼吸症候群などの呼吸の病気や便秘、大腸炎、胃腸炎などのおなかの病気、さらに心の病気まで大きく改善するのです。そんな魔法みたいな!と疑いたくなりますが、事実は事実。顔の筋肉、口、舌を動かすことが、身体全体の機能を改善させていくのでしょう。
では、どういう原理でそうなるのでしょうか?その複雑深遠なメカニズムの一端として考えられるのは、前回の連載で紹介した「よく噛んで食べる」と同じ理由です。口を動かすこと自体が消化器官を活性化し、おなかを発酵状態に持っていくので、免疫力を上げ、身体全体に腐敗物質や未消化物質の蔓延を防ぎ、やる気のもとセロトニンの生産を促すわけです。また口を動かすことは、脳の血流をよくしたり、脳にさまざまな刺激を与えます。 特に、時々口が開いたままの人、寝ている時に口がわずかに開いている人は、下記のイラストをよく読んで、是非取り組んで効果を実感して欲しいです。運転中とかお風呂の中などいつでもやれる時で構いません。「あいうべ体操」

空腹は最大のご馳走!

おなかを発酵させる食べ方として、「発酵食品を食べる」「おなかを廻す」「よく噛む」などを説明してきましたが、あとひとつあります。それが、「空腹になってから食べる」です。
おなかをグウと言わせてから食べることができたら、体の消化システムが準備万端。唾液はどろどろ出るし、そうすると胃液分泌も促進し、胃腸を活性化し、よいウンチが毎日出やすくなりますよ。何より、食事が美味しく食べられますよね。うちの子どもは小さい頃は祝日などは昼ご飯も食べずに一日中遊びまわって帰ってきて、弱々しい声で「おなか空いたあ」と言うことがよくありました。そうやってありついた夕食だと、その中味に関わらずどうしても「ああ美味しい!」という言葉が漏れ出てくるのです。空腹が最大のご馳走とはよく言ったものです。子どもたちに心から美味しいと思わせるご馳走をあげてください。
空腹になった時点で身体はやっと、食べ物の消化吸収、腐敗防止のための働きを休むことができます。つまり、空腹になってからが免疫システムを体の掃除や病気治しに最大限使える時間なのです。一日一回の空腹が病気の源を無くしてくれます。
大人の人で、「朝は食欲がわかない」と言う人がいます。身体がまだ食べるのは早いと言っているのですから、それなら食べなくともいいのです。かえって身体の調子がよいことが分かりますよ。原則は、「おなかが空いてから食べる」です。空腹は最大のご馳走!

健全な体のシステムを知る

人も動物も病気の時は食欲不振になりますが、あれは体が弱ったために食べる気力が無くなるのではありません。体のシステムが健全だから、わざと食べたくなくなるようにしているのです。
以前、うちの子どもがインフルエンザになった時、祖母に預けていたら電話が鳴って、「元気になって欲しくてお粥を食べさせたけど吐いてしまった。心配だから病院に連れて行って」と言うのです。私は、「食べさせるけん、吐くとたい!」「元気な証拠だから、そのままにしてて」と答えました。消化システムに力を注げない時に食べさせたら、正常な体なら吐きます。それが間にあわなければ下痢します。
ところで、私たちの感情には、腸内細菌が影響していることが報告されるようになってきました。例えば、ハングリー精神、子ども時代のひもじさが生きる力を強化してくれるという意味でしょうが、空腹により腸内細菌が活性化し、セロトニンなどのやる気の成分をたくさん作ったとも説明できます。
しかし、食べたい気持ちを無理に我慢するのは大人にとってはストレスになります。逆に、美味しいものを食べることはストレス解消の特効薬。ストレス解消と身体の掃除を天秤にかけて判断してくださいね。
どうしてこんな甘いことを言うかというと、私自身が食欲が人一倍大きいようで、空腹になるのが苦手なんです。自分ができないことを他人様に偉そうに言えないのです。小食は長寿の特効薬ですし、やれる方はやってくださいね。私はよく食べることを我慢できないので、その分農家になって畑仕事をがんばっています。肉体労働したあとの食事は格別ですね。
ただし、育成期の子どもにはだらだらと食べ物をあげないでくださいね。朝昼晩の食事以外に食べ物を与えないようにするには、見えるところに置かなければいいのです。親が間食したくなったら、子どもに隠れて自分だけ食べてください。だらだら食いがアレルギー疾患の原因のひとつです。また、特にお菓子やジュース、菓子パンなど安い加工食品の中には添加物たっぷり。これが子どもの落ち着きのなさに大きく影響していることが報告されています。

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