EM柴田農園の50から畑人 | 柴田和明・知子

Part.2 第23回 EM×無農薬で”最後まで”育てる工夫~夏の猛暑を乗り越えるトマトたち

収穫が終わるまで約9ヶ月!管理に手間がかかる野菜の代表『トマト』

今回は、「Part.2 第20回 夏の病害虫予防(トマト編)~無農薬で挑むトマト栽培のリアル。梅雨と猛暑を乗り越える工夫」の続編として、品質の良いトマトを無農薬で長期間収穫できる秘訣をお伝えします。

トマトは種まきをしてから収穫が始まるまで約4ヶ月かかります。
収穫が始まるのは7月上旬で、霜が降りる12月まで収穫するとして約5ヶ月間、通算約9ヶ月。
その間、剪定や誘引、わき芽取りといった管理作業も多いため、野菜の中でも特に手間がかかる作物のひとつです。
こんなに長い間トマトの世話をするのですから、農業経営はもちろん、家庭菜園でもできるだけ長く収穫したいですよね。
ところが、家庭菜園では病害虫に負けて8月のお盆前に収穫が終わってしまう方が多いようです。近年は猛暑や集中豪雨などによる異常気象で、トマト栽培はプロの農家さんでも難しいと言われていますので、トマトの高値は気候変動の影響と考えてもいいかもしれません。

 

2025年夏の防虫対策~9㎜防虫ネットの実力は?

2024年夏、私の畑ではオオタバコガの被害が出ました。そこで、2025年はその対策としてハウス全面に防虫ネットを張りました。

ネット越しに見たハウス内のトマト。外からの虫の侵入を防ぎながらも、換気が保たれている(<Part.2 第20回 夏の病害虫予防(トマト編)~無農薬で挑むトマト栽培のリアル。梅雨と猛暑を乗り越える工夫~害虫対策のネットについて>より)

ネットを張る際、専門家に相談したところ、「目合い4㎜だったら(オオタバコガを)防げる」と言われました。しかしこれでは風通しが悪く、トマトにとってはよい環境とはいえません。そこで私は、風通しを優先して9㎜のネットを使うことにしました。 どこまでオオタバコガが防げるのか不安でしたが、結果的にオオタバコガの被害はなく、10月前半にヨトウムシと思われる被害が少し出ただけでした。

入口付近に多少の隙間があったので2026年はここをもう少し工夫するつもりですが、9㎜のネットで100%防ごうとは思わず、害虫を寄せ付けない栽培環境を整えることを意識するのが一番大切だと感じました。

 

梅雨明けしたら猛暑対策

トマト作りで大きな弊害となるのが梅雨時の管理です。(<Part.2 第20回 夏の病害虫予防(トマト編)~無農薬で挑むトマト栽培のリアル。梅雨と猛暑を乗り越える工夫~ハウス農家の雨との闘い>参照。)
そして、梅雨が明けたら、すぐに猛暑対策が必要となります。

私たち人間は、暑ければエアコンの効いた部屋で生活することができますが、トマトは暑いハウスから出ることができません。そこで私はハウスの天井ビニールの上に遮光ネットをかけました。
今回使用したのは30%の遮光ネット。その分太陽光が届かなくなるデメリットがあります。トマトはとくに太陽光を必要とする野菜ですが、様々な高温障害の影響があるので、遮光ネットを使用するのはやむを得ない選択です。

写真ではわかりにくいかもしれませんが、天井のビニールは二重になっており、上にかけているビニールが遮光ネットです

猛暑時によくある高温障害の一つに「黄変果」があります。ヘタの周辺が黄色く変色してしまい、その部分は硬くなって食味が悪くなる現象です。私の農園でも猛暑の時期に軽くこの障害がでましたが、大きな影響はありませんでした。この夏はスーパーの売り場でも黄変果のトマトを多く見かけました。

黄変果を防ぐために葉で直射日光を避けるという方法もありますが、これが意外と難しいのです

 

EM散布の目的は病害虫予防だけではない

私はEM活性液をマニュアルよりも濃い濃度の50倍希釈で、朝晩できるだけ散布するよう心がけています。
とくに朝のEM散布は病害虫対策だけでなく、着果促進のために欠かせない作業です。 多くのトマト農家は確実な着果と果実の肥大促進のために植物成長調整剤(ホルモン剤)を使用しますが、私の農園ではこれを使わない代わりに着果を意識して、花房にむけてEMを散布します。EMを散布することがどの程度着果に効果的なのか正直なところはっきりとはわかりませんが、1段目から17段目までほとんどの花房が着果しているので私の農園では『一定の効果あり』と考えています。
なお、50倍希釈は一般的な使用方法よりも濃いため、作物によっては刺激が強すぎる場合もあります。実践される際は、様子を見ながら、少量から試すなどご注意ください。

農家さんによっては着果促進のために花房に風を送ったり、ハケを使ったりするそうです

 

長期間収穫するには誘引作業が決め手!

トマトを長期にわたって栽培をするためには、収穫作業と同時に不要な葉の除去とわき芽とり、誘引作業を同時進行で行います。
夏は成長が早く、収穫に追われるあまりこうした作業を後回しにしてハウスの中がジャングル化してしまう方もいるようです。
誘引作業のポイントは、実を外に向けて固定すること。すると収穫作業がぐっと楽になります。
細かな手順は<Part1 第10回 EM柴田農園直伝 猛暑も長雨も耐え抜くトマトづくり ~このトマトを見れば納得! EM栽培のすごさ!!>をご覧ください。

現在14段目~17段目のトマトが実をつけています。収穫は霜が降りる11月末まであと1ヶ月続きます(2025年11月1日撮影)
トマトを収穫するたびに花房の下の葉を取る作業を繰り返し行うため、すでにトマトの長さは5m以上にもなっています(2025年11月1日撮影)

来年のトマト栽培の土づくりは今年の秋から始まっている

トマトの収穫は11月末まで続くため、片付けをする12月上旬までは来年の土づくりができません。そこで私の農園では、2棟あるハウスを交互に使い、片方では秋から翌年の土づくりを始められるように工夫しています。以前の記事にも書きましたが、この方法には連作障害を防ぐ目的もあります。
トマト栽培をしていない方のハウスでは、カボチャやゴーヤーなどのウリ科を栽培しています。9月にウリ科の野菜の収穫を終えたらすぐに枝や葉を畝に落としてその上に雑草をのせ、土が乾かないようにEM散布をくり返します。
このように、来年トマトを栽培するための準備は秋から始まっているのです。

トマト栽培を終えた畝には、枝葉と雑草を敷いてEM散布。翌年のための土づくりがすでに始まっています

 

秋までトマト栽培を楽しむために

秋までトマトを育てて収穫を楽しむには、以下のような工夫が必要です。
まずは、高温障害や病害虫への対策、そしてこまめな管理作業(誘引・わき芽とり・下葉かき)を継続することが重要です。
また、朝晩のEM散布は病害虫の予防だけでなく、着果の促進や株の健全な維持にもつながります。
秋のトマトは時間をかけて追熟していくので、甘味や旨みが凝縮します。
家庭菜園でも、一手間かければ秋まで栽培が楽しめます。
皆さんもぜひ挑戦してみてください。

 

 


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<PROFILE>

柴田和明(しばたかずあき) 会社退職後、約2年間栃木県農業大学校で農業を学び、その後トマト農家で1年間研修を受け就農。 柴田知子(しばたともこ) 会社退職後、東京農業大学(世田谷区)オープンキャンパスのカレッジ講座で野菜や果樹の育て方、スローフード、発酵などの講座を受講。EM柴田農園では、種まきから仮植、種取りなどの細やかな作業を担当。