
本記事は全3回連載の最終回です。前回は、EMと有機物を組み合わせた土づくりの実践をご紹介しました。
EMを活用した土づくりと栽培技術を積み重ねてきた朝霞厚生病院付属農園。
その成果を確かめるために挑戦したのが、「身体に美味しい農産物コンテスト」でした。
目次
「身体に美味しい農産物コンテスト」への挑戦
付属農園の野菜を食べた方々からは、「美味しい」という声が数多く寄せられています。そこで、EMを活用した畑の野菜が、実際にどれほどの栄養価を持っているのかを確かめたいと考え、「身体に美味しい農産物コンテスト」に応募しました。
このコンテストは、日本有機農業普及協会が主催するもので、食べる人の美と健康を支える「抗酸化力の高い農産物」の栽培方法・土づくりの方法を確立していくことを目的としています。応募された農産物のうち成績上位の農業者から栽培方法を学び、その技術を分析・解析して栽培試験などを行うことで、有機栽培技術全体の向上を目指しているコンテストです。
分析項目は5つあり、その数値はチャートで示されます。チャートは、上方向が糖度、下方向がビタミンC、左方向が硝酸イオン、右方向が抗酸化力として数値化・評価されます。
解説によると、硝酸イオンは、圃場の管理が良くない場合に有機物が酸化して発生し、野菜のえぐみや苦味の原因になる、あまり好ましくない成分です。過去のコンテスト結果から、硝酸イオンが増えると糖度・ビタミンC・抗酸化力が低下し、逆に硝酸イオンが少ないほど、糖度・ビタミンC・抗酸化力は高くなる傾向が報告されています。

2023年の悔しさと、他農家の栽培法からの気づき
2023年のコンテストに参加した際、朝霞厚生病院付属農園のカブは、硝酸イオン・糖度・抗酸化力は平均並みだったものの、ビタミンC含量が極端に少ないという結果になりました。そのため、この年は入賞を逃しています。
同年のカブ部門で最優秀賞を受賞したのは、徳島県の(株)阿波農産さんでした。阿波農産さんのホームページを確認すると、土づくりに菌床と鶏糞を活用していることが紹介されていました。

【2023年 総評コメント】
DB平均値(カブ(皮むき)/12〜1月)と比較すると、抗酸化力《植物ストレス耐性力》は約1.2倍、Brix糖度については約1.1倍でしたが、いずれも平均値のばらつきの範囲内の値となりました。ビタミンC含量に関しては約4割と低い値となりました。
硝酸イオン含量においては、約8割でしたが、平均値のばらつきの範囲内の値となりました。
食味については、瑞々しく弾力のある食感で、濃厚で華やかな甘味、余韻の残る旨味も感じられて美味しい、という評価でした。
コンテスト上位農家に共通する4つのポイント
「EMを活用している畑なのに、なぜカブの硝酸イオンが多かったのか」「ビタミンCが少なかった理由は何か」「どんな改善が必要なのか」。そうした疑問を探る中で、日本有機農業普及協会のホームページに、コンテストで優秀な成績を収めた農家に共通する4つの栽培ポイントがあるという記事を見つけました。
その記事で示されていたポイントは、次の4つです。
1つ目は、土壌分析と施肥管理がしっかり行われ、適切な施肥がなされていること。
2つ目は、有機物を圃場に戻して地力を高める栽培方法が取られていること。たとえば、ホウレンソウには麦わらを、トマトにはサトウキビの搾りかすを、コマツナにはソルゴーをすき込むなど、有機物を畑に返す工夫が挙げられていました。
3つ目は、堆肥や有機物に含まれる炭水化物を微生物の働きで可溶化し、植物の根から吸収しやすい形にしていく「炭水化物を土壌に溶かし込む技術」が活用されていること。
そして4つ目は、これら1~3の管理がうまくなされていると、作物は土壌中の硝酸だけでなく、微生物が生成したアミノ酸なども吸収できるようになり、成長に必要なエネルギーが確保される。その結果、光合成でつくった糖を、体内の糖や栄養素としてしっかり蓄えることができる、という点でした。
この記事を読んだとき、「微生物を活用した有機物の利用が、大きなカギになる」と感じました。そこで、この4つのポイントを朝霞厚生病院付属農園にも当てはめ、次のような取り組みを行いました。
最優秀賞を獲得するために改善した4つのポイント~土壌分析の見直しから整流結界のメンテナンスまで
- 土壌分析の強化
現在の土壌状態をより正確に把握するため、過去4年間の土壌分析結果を改めて見直しました。その結果、とくに塩基類が不足していることがわかりました。そこで、海水EM活性液や塩の活用を強化するとともに、塩害対策としてEMグラビトロン炭の使用頻度も増やしました。
- 有機物の効果的な活用
有機物を効果的に畑へ戻すため、EM生ごみ堆肥と緑肥の使用の組み合わせやEMボカシなどの施肥のタイミングを見直したりと、土づくりと栽培スケジュールを細かく組み立てました。
- EMと炭、塩の活用
海水EM活性液・EM3(光合成細菌)・炭・塩を用いて、緑肥や収穫残渣(EM生ごみ堆肥を含む)などの有機物を、植物が利用しやすい形に効率よく変換できるよう、土づくりの場面だけでなく、日常的な栽培管理の中でも活用の頻度を増やしました。
- EM整流結界技術の見直し
EMの最新技術として行っている整流結界の効果をさらに高めるため、整流ブロックやソーラーライトのメンテナンスを行い、EM活性液の点滴装置も新たに設置しました。
2024年、カブ部門で最優秀賞を受賞
こうした試行錯誤と改良を重ねて栽培したカブを、2024年のコンテストに出品しました。結果は、カブ部門での最優秀賞受賞でした。


【2024年 総評コメント】
DB平均値(カブ(皮なし)/12~1月)と比較すると、抗酸化力(植物ストレス耐性力)は約3.1倍、Brix糖度については約1.5倍と、いずれも非常に高い値となりました。ビタミンC含量に関しては約1.5倍と高い値となりました。
硝酸イオン含量においては、1割以下の低い値となりました。
食味については、瑞々しくサクサクとした食感で、濃厚で余韻の残る甘味と旨味に加えて、ほんのりとした辛味が感じられて美味しい、という評価でした。
これからも「美味しくて健康になれる野菜」を
2024年の結果を受けて、朝霞厚生病院付属農園では、今後もEMと有機物、なかでも緑肥を組み合わせた土づくり計画を継続していく予定です。
病院の患者さんや職員の皆さんに喜んでもらえる、「美味しくて健康になれる野菜」をこれからも作り続けていきたいと考えています。








